車やバイクを使わない公共の交通機関を使った徒歩キャンプや、山でキャンプする場合は、つねに寝室(テント)を持ち歩かなければならない。その観点から野外での適切な寝室を作るためのさまざまなポイントを考えてみたい。
野外で寝るということ〜ここをキャンプ地とする気持ち〜
「野外で寝る」「野営」というと、ついテント泊を考えてしまいがちだが、雨や夜露の心配がないのなら、シュラフとマットだけでごろ寝をするのも気持ちよい。
最近は軍幕タイプのバップテントが流行しているが、さすがに重過ぎるから徒歩キャンプには不向きだろう。
日除けにタープを張るならいいだろう。よく晴れた日に星を見ながら眠るのは、一度やったらやみつきになること請け合いだ。テントという極薄の壁を取り払うだけでも、一歩も二歩も、自然に溶けこめたような気持ちになれます。
夜露を避けるだけならば、ゴアテックスなどの防水透湿素材を使ったシュラフカバーを組み合わせればよい。濡れて困る荷物や野生動物を呼び寄せそうな食料はザックにかたづけて、ザックカバーを掛けてしまえばOK。
悪天候も小雨程度ならば、小型のタープがあれば問題ない。タープを設営する前に雨が降り出して地面がぬれてしまっている場合でも、グラウンドシートがあれば快適に過ごせます。空はタープで覆われてしまっても、風や木々の息遣いは充分に聞こえます。
あるいは日本国内を旅する場合、シュラフとマットさえ持っていれば、意外とどうにかなってしまうもの。無人駅や屋根付きのバス停、公園の施設や神社の軒先などを利用すれば、テントはなくても雨露をしのぐことができます。
「野営=テント泊」という固定観念を取り払ってしまうと、またひとつ「自由」が見えてきます。
3泊以上の旅になるときは、テントの万能性は心強い。山岳用のテントなら軽くてコンパクトだし、暴風雨にも充分耐える。信頼できる一品を、ひとつは持っておくといい。
テント選びの5つのポイント
テントを選ぶ際に、ソロキャンプだから一人用でいいと決めてしまうと後で後悔します。なぜならテント内に荷物を置けなくなるからです。
ULにこだわったり極限の登山でもない限り、一人で使うなら二人用のテントを選ぶのが良い。それ以上大きいと無駄に重いし、冬は寒い。
次に考えたいのはテントの素材。防水透湿性素材を使ったテントはフライシートが不要なぶん、軽量だし設営の手間も省ける。反面、豪雨や長雨のときは、雨が浸みてきたり、若干の結露も心配。
フライシート付きのダブルウォールタイプならテントの外に前室ができるので、炊事スペースや荷物置き場に使え、テント内の空間が有効活用できます。
防水透湿性素材のテントでも、同じ大きさでナイロン素材のものが用意されているモデルなら、必要に応じてフライシートを流用することも可能だし、フライシートの代わりにタープを使えばいい。。
最近のテントはほとんどがつり下げ式になっていますが、フレームの構造でも居住性や携帯性が変わってきます。
ドーム型は風に強く、ポールもストレート・タイプが多いのでコンパクトに収納できるし、軽量なものが多い。
反面、サイドパネルの傾斜が強く、頭上空間が制限されるので、悪天候で停滞するときには窮屈さを感じることもあります。
雨天時の出入りの際に雨が入りやすいのも欠点だが、サブフレームを使って大きな前室を形成できるものを選べば、この点は解消できます。
最近流行りのAフレーム型はサイドパネルを垂直に近く設営できるので、居住性がよい。
前室が軒のように使えるので、弱い雨ならフライシートの入口を開けたままでも、前室で調理ができる。ただし同じ床面積の場合、ドーム型より重いものが多いし、ポールもかさばる。
ドーム型を選択する場合、入口の位置にも注意したい。どちらも一長一短なので、自分の旅のスタイルに合わせて選ぼう。
長辺側に出入口のあるものは面積が大きく取れ、全開にしたときの通気性がよい。
両面に出入口があるものを選べば、風通しはさらによくなる。また、サイドパネルの傾斜が立った側が出入口になるため、出入りの際にファスナー操作がしやすい。
短辺側に出入口があるものは、全開にするとその場で立ち上がることができるため、出入りがしやすい。
反面、雨天の出入りの際には、雨が奥まで入ってしまう。複数人で使用する場合、出入りのときにメンバーをまたがなくて済むというメリットもあります。
重量や仕舞い寸法も、重要なチェック項目。アウトドア・ギアのなかでも単品重量の大きなもののひとつがテントなので、軽量テントは荷物を軽量化するには効果的なアイテムだ。
しかし超軽量テントは極薄の素材を使っているため、強度や耐久性はそれなりに低下している。特にボトムは、普通は本体パネルやフライシートに薄い素材を使っているものが多く、笹の切り株でも穴が開くことがあるので、張る場所には注意する必要がある。
設営場所選びもおろそかにできない
快適に眠るためには、設営場所を選ぶのも重要なポイント。
まず気をつけたいのは、法的にテントを張ってもよい場所なのかどうか。
条例などで「キャンプ禁止」になっている場所を除いて、国有地ならばどこにテントを張っても処罰される法的根拠はない。ただし、国立公園や国定公園の特別地域と特別保護地区に無届けでテントを設営することは、自然公園法第17条第3項および第18条第3項によって禁止されている。
私有地ならば所有者の許可を得れば可能だが、断りもなくテントを設営すると不法侵入罪に問われることもある。
次に重視したいのが安全面。落石の恐れがあるガケや斜面、沢筋、雪渓の下や、河原や中州の増水線より低い所(特に天気が崩れそうなとき)、春~秋の河原の草むら(マムシに注意!)は避けたほうがよい。また、暴走族の落書きがある公園とその周囲も、安眠には適さないケースが多い。
法律面と安全性の面で「適地」と判断されたら、今度は快適性の面から考えよう。ポイントは水はけと寝心地だ。
日当たりがわるくじめじめしている場所は、寝ていて不快なだけでなく、撤収のときにテントが湿っていることもあります。
また、不意の雨のときには水の通り道になる可能性もある。地面が乾いている所でも、くぼんでいて水のたまりやすそうな所は、夕立などが想定される季節には避けたほうがよい。
ごろた石の河原はマットを使っても寝心地がわるいし、ガレ場はテントのボトムに穴を開けてしまう恐れもある。
山間部では、風の通り道になりそうな鞍部や谷筋は避けるべき。木の枝の伸び方を見れば、恒常的に風の吹く場所かどうか、ある程度の判断はできるはず。そういう場所しかない場合は、岩陰などを利用することを考えよう。
冷えこむ季節ならば、くぼ地も避けたほうがよい。重い冷気が窪地の底に滞留して、そこだけ特に寒くなるからだ。夏場に東向きの場所に張ると、日の出とともに暑くて雇でいられなくなる。
快適なのは、水はけがよく、乾いている場所。河原なら玉砂利の上や砂地、山間部なら草原や落ち葉の上などが、柔らかくて寝心地がよい。
万-テントが破損したときのために
最近のテントのポールは焼き入れした肉薄のジュラルミン製が多いため破損するときは曲がらずポッキリ折れてしまう。
応急リペア用のアルミパイプを携帯していれば、折れた場所にそれを通してガムテープなどで固定すればよい。購入時に付属されているものもあるが、ない場合は登山用品店などで手に入る。
補修用アルミパイプは、シノダケでも代用できる。ペグや流木を添え木にする手もあるが、スリーブ式のテントでは通せなくなってしまう可能性もある。
ボールの補修が絶望的なときや、うっかりボールを忘れてしまったときは、テントの項点を立木などから吊ることを考えよう。ポールがなくても、とりあえず寝るスペースだけは確保できるはず。
テントを長持ちさせるには、使用後のメンテナンスがポイント。
帰宅したら陰干ししてよく乾かし、汚れを落としてから収納しよう。湿ったままでしまっておくと、次に使用するときまでにカビが生えたり、防水皮膜が加水分解して生地がべたべたになってしまうぞ。