夏山の恐怖!雷から身を守る方法

山の雷

夏山で出遭う大きな恐怖といえば雷。気象条件から雷の発生を事前に予測する方法と、実際に山で遭ってしまったときの対処法を考えてみよう。

「さえぎるもののない山の稜線のをまたたくまに雷雲がおおい、目の前を閃光が走る雷の轟音は、足もとを地ひびきのように通りぬけていく。ザックにつけたカメラの三脚はプワーン、ブワーンと不穏な音を立て、その恐怖からはのがれようもなく、一目散に小屋をめざし、道を急いだ」

「テントを設営し、ウキウキしながら夕食の支度をしていたら、雷に襲われ、米を炊いている途中だっていうのに、なすすべもなく、テントの中で雷がやむまでずっと恐怖におののいていた」

「広い草原で雷に遭ったので、雷から逃れるため、大きな木を探し、木の根元で雨をしのぎながら煉っていた」

こんな経験をもつ人も多いのではないでしょうか。

そう、雷は怖いのです。鍋1989年には北アルプスの大天井岳で、1997年には巻械山で雷の直撃による死亡事故がありました。

また、雷について正しい知識をもっていなかったため、雷の危険に身をさらしていた、ということも少なくありません。先に紹介した体験談のなかにあるように、カメラの三脚をザックにつけたままでいたり、テントの中や、大きな木の根花に避難したりするのは、とても危険な行為です。

いっぽう、雷が発生する気象条件や、観天望気を知っていれば、事前にその恐怖から逃れることもできます。

楽しい夏山を前に、雷についての知識をもう一度確認し、いざというときに、あわてず適切な判断と行動ができるようにしましょう。

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最善の雷対処策。雷を事前に予知するコツ

夏山で遭遇するほとんどの雷は、急にガスに巻かれたと思うと、いきなりドカンと落雷してくる。それが夏山の雷の特性だ。

◎入山前から雷が発生しやすい気象状況を予知し、危険の場合は入山を控える
◎行動時間を早めに切り上げるようにする

その場の状況に応じて臨機応変に行動することが、雷による被害を避けるための重要なポイントとなります。

★雷が発生する可能性があるときは、入山中には、自分のいる山の周囲から湧き出す雲の状態に、注意を怠らないこと。

雷の発生の有無を前もって知るには、地上の天気図で日本付近に前線があるかないかを知り、たとえ前線がなくても、必ず気象衛星からの雲の画像で、雲の状態をよく見ること。

雷の危険地帯。ここが危ない!ここが危険!
これだけは知っておきたい。山で雷に遭ってしまったら。

ついさっきまでは青空だったのに、にわかに雲が広がり雷鳴がひびく。
こんなときにあわてないために、危険な場所と避難の方法を、夏山に行く前にぜひ知っておこう。

雷雲が発生したとき、屋外にいるかぎりはどこであれ、落雷の直撃を受ける危険があると考えていい。基本的に雷は、雷雲の位置しだいで、山岳地、平野、海など場所を選ばずにどこにでも落ちる可能性があります。

とくに山岳地には、雷が落ちやすい場所がたくさんある。おまけに人間の体というのは、もともと雷を引きつけやすい性質をもっている。

雷のときに山を歩くことがいかに危険な行為か、登山者は、今一度自覚する必要があります。

山頂・尾根はきわめて危険な落雷エリア

1979(昭和54)年8月6日、北アルプス槍ガ岳頂上付近で連続して落雷があり、4人の死傷者が出ました。1982(昭和57)年8月8日には富士山九合五勺にある鳥居付近に落雷。その衝撃によって約15人が数メートル跳ね飛ばされ、7人が傷害を負いました。そのほかにも浅間山や燵ガ岳、大天井岳、巻機山などでも山頂での落雷事故が起こっている。

これらはたまたま記録に現われた事故であり、登山者がいないときの山項への落雷は、各地の山で多数の事例が報告されていると考えられます。

毎年、山頂への落雷はかなりの頻度で起こっています。

雷にしてみれば、大地の突起物である山、それもいちばん高い山頂は、格好のターゲットになります。また、尾根上への落雷も多い。山項と尾根は、きわめて危険な落雷エリアです。

岩場での人間の体は雷電流の格好の通り道になる

史上に残る落雷事故といえば、1967(昭和42)年8月1日に北アルプスの西穂高岳で起こった事故が思い出される。この日、松本深志高校の学校登山中の46人が、下山中に独標付近で落雷を受け、11人が死亡、14人が傷害を負うという大惨事になった。

死者11人のうち、9人が感電死で2人は転落死であった。この事政では落ちた雷の電流が、地面に吸い込まれず、火花放電となって岩場伝いに走り、9人をつぎつぎになぎ倒しました。

山岳地の岩場というのは、雷が落ちやすい場所のひとつ。

ところが岩というのは電流を通しにくいため、雷が岩場に落ちると電流が地中に染み込んでいかず、岩伝いに火花放電が走ります

その放電路のそばに人間がいると、雷電流は集中して人体を通って流れる。雷というのは、なるべく電気が流れやすいところを通ろうとする性質がある。岩場では、人間の体は雷電流の格好の通り道となります。

雨のハイキング

高い木の下は電流が伝い、人体を側撃するので近寄らないこと

高い木の下にいれば人間に落ちる心配はないと思うかもしれないが、これは間違い。

雷は高い木に落ちやすい。しかし、そのすぐそばに人がいると、木に落ちた雷の電流が幹や枝から人体に飛び移ってくることがあります。このような現象を「側撃」と呼んでいる。側撃が起こるのは、木よりも人体のほうが電流が流れやすいからです。

人間の心理として、雷が発生したときにはどうしても高い木の下に避難したくなる。雷のときには雨を伴うことが多いため、雨宿りの意味でもなおさら木の下に避難しようとします。しかしそれが死を招く行為になりかねないのです。

樹林帯の中は常に側撃の危険にさらされている

人間の心情として、樹林帯のなかはなんとなく安全に感じられるものである。たしかに周囲は高い木でかこまれているため、雷の直撃を受けることはまずないだろう。しかし、雷は樹林帯のなかの高い木をめがけて落ちてくるのです。

たまたまその木のそばにいたとしたら、側撃を受けてしまうことになります。樹林帯のなかにいたのでは、どの木が高いか判別のつけようがありません。

樹林帯ではどの木に雷が落ちてもおかしくないので、そのなかにいるかぎり、常に側撃の危険にさらされていると思っていい。

なお、木から2メートル以上離れ、その木のてっぺんを45度以上の角度で見上げる範囲内で姿勢を低く保っていれば、側撃を受ける可能性は低くなるとされています。そのさいには幹からだけでなく、どの枝先、どの葉先からも必ず2メートル以上離れなければならない。

これを保護範囲といいますが、野外でこの条件を満たす場所を捜し出すことはきわめてむずかしく、実際的な避難法とはいえない。よって「木のそばは危険。できるだけ離れて姿勢を低くする」とインプットしておくのが身のためです。

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草原、湿原では雷の標的になりやすい

草原や混原などのように、周囲になにもない平坦地では、人間の体が雷の標的になりやすい。

前述のとおり、人体そのものが雷を引きつけやすいうえに、ほかに標的になるものがないのだから、危険度は非常に高いと考えていい。

たとえ尾瀬ガ原のように周囲を高い山にかこまれた平坦地でも落雷は起きるので、決して安心はできない。

テントの中は危険!テントのポールに落雷するので注意

キャンプをしていたボーイスカウトのテントにカミナりが落ち、5人が重軽傷を負うという事故が起こった。1978(昭和53)年5月2日には、北アルプスの西岳山頂付近に張ったテントに落雷かあり、3人が傷害を負っている。

雷のときにテントの中にいると、なんとなく安心してしまう。しかしそれは錯覚にすぎない。テントのシートは落雷を阻止することはできないうえに、テントのポールは落雷を受けやすく、これまでにも、多くのテントへの落雷事故が起こっている。

ポールに落ちた雷は側撃を起こし、テントの中にいる人に致命的な傷害を負わせます。木の下などにテントを張っている場合は、木に落ちた雷の側撃を受けることもあり、実際にそういう例も報告されているそうです。

避雷針が無い休憩所や東屋は落雷の危険度が高い

1992(平成4)年目Hl日、丹沢の大山では木造の東屋(あずまや)の屋根に落雷があり、雨宿りをしていたハイカー1人が死亡、10人が重軽傷を負った。

それまでは、休憩所や東屋のような屋根のある建造物は比較的安全だというイメージがあったのだが、この事故によってそれは完全にくつがえされた。避雷針などの避雷設備のない東屋や小屋は、テント同様落雷を阻止することはできません。

なお、大山の事故では、東屋の中で立っていた人が死亡したり重傷を負ったりしている。軽傷の人はすべて腰を下ろしていた。

背の高いザック、ストック、傘などは落雷を受けやすい

登山者というのは、地面から人体が突き出ているようなものなので、雷か発生したときに無策のままでいると、落雷を受けてしまう危険性が高い。さらに人体から物体が高く突き出ていたりすると、その物体がなんであっても、落雷を受ける確率はいっそう高くなります。

たとえば、テント山行などでは荷物がかなり多くなり、ザックを背負ったときにザックの上部が頭よりも上に出てしまうことがしばしばある。また、テントのポールやストック、三脚、ピッケルなどをザックにつけたときも、これらの先端が頭より上に突き出てしまう。

このような状態は、避雷針を突き出して歩いているようなものなので、危険きわまりない。北アルプスの白馬岳では、背負子に落雷して重傷を負ったという事例もある。

また、雷のときに、傘をさしたりストックを頭上高く振り上げたりするのも自殺行為となるのでやめたほうがよい。

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遠雷

かすかに雷鳴が聞こえる程度の遠雷であれば、さほど怖いものではない。しかし、それは大きな誤りで、ときに雷は10キロ以上の距離を一瞬にして走る。

遠くで「ゴロッ」と聞こえたら、次の雷が自分の頭上に落ちてくる可能性は充分にあります。

それは、雷が通りすぎたあとも同じだ。激しい雷が通りすぎていって、頭上に青空が広がっても、決して油断してはならない。落雷点は雷雲の移動とともに規則的に移動するのではない。雷雲の位置に関係なく、雷はあちこち不規則に落ちます。

「もう大丈夫」だと思って行動を再開したとたんに落雷を受けるという事故も実際に起きています。かすかにでも雷鳴が聞こえるうちは、まだまだ危険だと思うべきで、雷鳴が聞こえなくなってからも申分ほどは安全な場所で待機していたほうがいい。

雷から逃げるためのセイフティ・ゾーン

山では雷の前兆をいち早く察知し、雷を避けるように行動することが大事である。それでも遭遇してしまったときには、ただちに後述する安全な場所に逃げ込もう。

●山小屋の中

雷から身を守るには、自動車や電車、バス、しっかりした建物の中に逃げ込むことだ。山のなかでそれに該当するのは山小屋以外にない。もし近くに山小屋があるときにはすぐにその中に避難しよう。

山小屋に避難したら、柱や壁から1メートル以上離れたところで低い姿勢を保ってじっとしていること。

柱や壁にくっついていると、カミナリが落ちたとき、雷電流がその人に集中して流入する危険がある。山小屋に限らずカミナリが激しいときは、電話器を手に持つことは禁物である。電話をかけていて電話線から雷の高電圧が伝わって死亡したという事例もある。なお、携帯電話の使用は高電圧が伝わる心配はないためまったく問題はない。

●鉄塔や送電線の下

山でもよく見られる鉄塔や送電線は、カミナリを引きつけやすく、避雷針と同じ役割を果たす。これらは電気をよく通す導体でつくられているため、そのすぐ下に人間が立っていても、側撃を受ける危険はほとんどない。

つまり鉄塔や送電線のFにいれば、落雷の直撃を受ける心配はまずないと思っていい。

送電線の下に逃げ込むときには、送電線の真下から左右10メートル以内のベルト地帯にとどまっていること。また、鉄塔のそばに逃げ込むときにも、念のため鉄塔から2メートル以上離れていたほうが無難だ。ただし、姿勢を低くすることを忘れてはならない。

●そのはかの比較的安全な場所

もし、近くに山小屋も鉄塔も送電線もない場合には、少しでも安全な場所に避難するしかない。

自然の地形のなかでも比較的安全なのは、谷間や窪地、山の中腹など。高山帯では、尾根上にいるよりは、斜面のハイマツ帯のなかにもぐり込んだほうがずっといい。

これらの場所に逃げ込むことができたら、なるべく姿勢を低くしたままでじっとカミナリをやりすごすこと。姿勢は低ければ低いほどいいが、しゃがんでいて雷が落ちた例はいくらでもあり、万全とは言えない。

パーティの場合は、固まって行動していると、万一雷が落ちたときに被害者が増える可能性が高いので、なるべくそれぞれが距離をおいて避枕するようにしよう。

●雷の多いエリア、雷事故の多い山はどこ?

夏の雷は、日射によって熱せられた地上の暖かい空気が、上昇気流となって上空に上がると同時に、冷たい空気が上層に流れ込んだ場合に起きる。こうした現象は、海岸部よりも内陸部で起きやすい。とくに山岳地帯では、山の斜面に沿って上昇気流が生じやすいため、それだけ雷雲も発生しやすくなる。

なかでも湿った暖かい空気が大量に集まりやすい場所、平野や盆地を控えているところでは、山麓部に沿って雷が発生する確率が高くなる。

たとえば栃木や群馬などの関東平野の北西部、岐阜の濃尾平野、京都盆地、奈良盆地、九州の日田盆地などは、雷が発生しやすいエリアとしてよく知られている。

また、山岳地でのおもな落雷事故を見てみると、北アルプスの槍ガ岳や富土山で多発していることがわかる。

ただ、落雷現象はほかの山でも間違いなく起こっている。そのときにたまたま登山者がいなかっただけの話なのだ。槍ガ岳と富士山で落雷事故がめだつのは、それだけ登山者が多いからだともいえる。

だから「この山が危険」とは一概に言うことはできない。強いて言うなら、雷の危険性は、どの山にも等しくあるということだ。

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金属を身につけているのは危険か

平成I2年8月5臥長野県の高妻山で4人パーティが落雷を受け、2人が重軽傷を負うという事故が起こった。これを1部のマスコミが「登山靴の金具に雷が直接落ちた」と報道した。重傷者が両足首にやけとを負い、右足の靴下がポロポロに焼け焦げた状態だったことからこのような報道になったようた。

「雷は金属に落ちる」というのは昔から言われていることであり、二の事故かその一例であるように思える。しかし、雷にくわしい北川信十郎氏は「それは報道の先走りだろう」と新聞記者の表現に異を唱える。

詳しい状況はわからないが、と前置きしたうえで、北川氏は「雷は人体全体に落ちたのであり、人体全体に流れた雷の電流が登山靴の金具のところて放電現象を起こしたのだろう」と推測する。

金属製品を身につけているいないに関わらず、雷は人間の身体をめがけて落ちてくる。屋外の人体は、同じ高さの避雷針と同様に落雷を引きつけやすい。雷は身につけている金属製品に落ちるわけてはなく、人間の体そのものに落ちるのである。

だから雷のときに金属を身体から遠ざけても安全にはならない。それどころか、身につけた金属製品が落雷から命を救うことさえある。

落雷により体内に入り込む致命的な電流を、身に帯びた金属が外に引っ張り出してくれることもあるからた。雷のときは金属を身につけたまま避難しよう。

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