ワンディハイキングを何回も繰り返しているうちに、ひとり歩き登山に慣れ、もっと長く自然にひたってみたくなったら一泊二日の山行を行なってみよう。
それには初心者でも安心して、夜を過ごせる山小屋を利用するのがよいだろう。
山小屋に泊まって、黄昏時の山の美しさ、山小屋のおやじさんや見知らぬ登山者との語らい、朝日が登る時の尊厳さなどを目のあたりにすればあらためてワンデイハイキングと山に一泊する違いの大きさに気づくだろう。
そして、登山は山中に泊まってこそ本物と思う人も多いに違いない。
しかし、山小屋を山小屋らしく利用するというのは、意外に難しいものなのです。
よりよい山小屋の利用の仕方を知らないばかりに、混雑に巻きこまれ、幻滅だけを感じてしまった人もいると聞く。
山小屋本来の魅力を知ることなく、山小屋離れしてしまうのは不幸なこと。
山小屋をより快適に利用するにはどうすればいいのだろう。
ハイカーが山小屋を利用するにあたって大切な心構え
「最近の登山者は山小屋を旅館やホテルと同じように思っている人が多くなったとよく聞きます。
山小屋に着いて風呂はどこ?ユカタはないの?と聞く人が何人もいてア然とする」こう言うのは、南アルプス鳳胤三山のある小屋番氏。
金を払えばなんでもできるという都会の風潮が山の中にもあらわれてきています。
言うまでもなく山小屋は不便な所にあり、旅館やホテルのようにはいきません。
山小屋の中には、北アルブスのように登山者が多く、物資をヘリコプターで荷上げするために豪華な設備、豪華な食事を提供してくれるところもあるが、それはあくまでも一部。
多くの山小屋は、少人数で、荷上げから登山客の世話、小屋の補修までを行ない、豪華さからは遠い質素な現状を余儀なくされています。
山小屋では山小屋でしか味わえない魅力を、先に求めたほうがいい。
山、そして山小屋は都会の延長でないことを、しっかり頭に入れておきたいものです。
山小屋の小屋番の立場になって考えてみよう
山小屋を利用する際も同じで、わからないことがあったら、自分が小屋番の立場になって考えてみることです。
たとえば、山小屋に泊まる際、予約が必要かどうかと迷うそうですが、山小屋は緊急避難施設の要素が強いため、入ってくる人はすべて泊めなければならない。
だから基本的に山小屋に予約は必要ないのだが、山小屋の小屋番からすれば、事前にハイカーの宿泊者がどれくらいになるのか知る必要がでてきます。
なぜならば山小屋の小屋番は予約された人数に、飛びこみの客を予測して、その日のだいたいの宿泊人数を考え、食事などの用意をするからです。
もし、山小屋に予約してあっても、雨などのため目的の山小屋へ行き着けなかった場合はどうすればいいのか?
山小屋の小屋番は、予約した登山者がこられない理由を天候などから判断していますが、やはりどこかで大丈夫だろうかと心配しているものです。
後日ハガキの一枚でも出して、理由を書いておくと小屋番も安心する
だろうし、つぎの時にも行きやすくなることだろう。
旅館などと違って、宿泊のキャンセル料などをとるところはほとんどありません。
空いた時期、空いた山小屋に泊まるのが快適で感動的な山登りにつながる
なんといっても混んだ山小屋へ入ることほど、つまらないことはない
足を蹄まれたり、登山者同士でけんかしたり・・・、山旅のロマンなんて程遠くなります。
「山小屋が巨大な人間の缶詰になったみたいだった」というぐらい登山者が山にドッと押しよせるのは休前日や連休のとき。
だからなにもわざわざ混雑にもまれる必要はなく、それ以外の空いた時期に泊まるべきでしょう。
ごく普通にカレンダーどおりの休日に従えば味気ない集団登山になりがちです。
ひとり歩きをする登山者は、混雑に巻き込まれないように有名な山小屋を選ぶより、ちょっと下ったところにある山小屋を利用するほうが、快適に過ごせるでしょう。
山小屋では整理整頓が基本です
山小屋に着いて受付が終わると、すぐ横になってしまう人をよくみかけます。
しかし、夕食までにカゼをひかないために着替えをし、セーターなどを着こんで快適に過ごせるようにすること。
さらに、濡れたものはなるべく干すようにしよう。
大切なのは、自分の寝床がきまったら、枕元に水筒と懐中電灯を置き、それ以外はザックにしまい、指定場所に置く。
寝床の上に自分の荷を散乱させないようにしたい。
なお、山小屋の寝具は快適でないこともあるので、タオルを布団のエリのところにつけたり、通気性のよいシュラフカバーをシーツがわりにするとよい。
忘れがちなのが登山靴の整理。
同じような靴がならぶので、間違われないためにも、荷札やリボンなどの目印をつけておきたい。
靴がバラバラにならないようにあらかじめヒモで結んでおくことも忘れないようにしたい。
山小屋泊に慣れたら自炊生活を経験してみよう
ひとり歩きの初心者ハイカーが泊まる山小屋は、初めは2000m級の中級山岳にある一泊二食寝具付の山小屋がよいだろう。
これだと、ワンデイ・ハイク並の装備で歩けるし、距離もそれほど負担になりません。
そして何回か経験したら、つぎには、装備は重くなるものの、自炊山行をしてみよう。
自分で夕食と朝食をクッキングするのは、意外と楽しいものです。
山小屋によっては、自炊の登山者を歓迎してくれなくなった所もあるが、むかし気質の山小屋は自炊派を歓迎しています。