道に迷い、そして転落滑落へ~遭難事故寸前から学ぶ登山の教訓~

2006年の夏、Hさんは職場の女性3人(50代)と南会津の七ケ岳へ出かけた。
午前10時30分、黒森沢登山口から登山開始。
沢沿いのコースを1時間ほどで護摩滝の下に着いた。
滝の高さは20メートルほどで、左側にロープが見えるが、直登はとても無理なように思えたので、滝の下にあったヤブ道から巻いて越えようということになった。

山のリスク
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滝の巻きルートを見落としてルンゼへと引き込まれ、ヤブ尾根を半日迷い歩く

ヤブ道に入ると、しだいに岩場とガレに変わった。
やがて恐怖感を覚えるほどの急傾斜になったが、女性たちは緊張感を楽しむように、軽やかに登っていくようだった。

Hさんは、これは巻き道でないかもしれないと感じ始めたが、なんとなく言い出せないままに登り続けて行った。

岩場を登りきると黄色の花、が一面に咲く草地になり、踏み跡は完全になくなった。

草の束をつかみ、ときおり現われる木や岩場を手がかりに登った。

12時45分、急斜面を登りきって稜線に達したが、そこは完全にヤブ山で、進退きわまってしまった。

どうするか真剣に話し合い、速くに小さく見える鉄塔へたどり着けば道があるだろう、ということになった。

背丈を超えて密生するクマザサと瀧木のヤブこぎが始まった。

初めて経験する本格的なヤブこぎは全身の体力を奪い取るだけでなく、精神的にも追い詰められ、遭難の不安におびえさせられた。

ときおり木によじ登って方角と距離を確認した。
こうして3時間あまり、あきらめずに少しずつ前進し、ついに鉄塔にたどり着いて生還することができた。
(きいたま市Hさん〔男・当時58歳〕)

道迷い遭難はどんなきっかけで起こるか

護摩滝の「巻き道」を登り始めたとき、そのコースが正しい確証はなかったはずである。

それなら偵察として、つねにもどれる状況を確保しながら登るべきだった。

また、滝の左側に見えたロlプを登って偵察してみてもよかった。
いずれにしても、不確かなコースに深入りしすぎて引き返せなくなってしまい、その後の道迷いが始まった。

本事例が示すように、道に迷っても冷静に行動すれば危機を避けられることが多い。

迷ったときに最も注意すべきことは、転落、滑落、転倒事故などを起こさないことだ。

護摩滝の「巻き道」と思った場所は「危険を充分に感じる、ガレ場で、浮き石も多かった。

あまりにも急傾斜で、ロープがなかったため下山は無理と判断した」とDさんはいう。

この上の草付き斜面も、かなり危険な傾斜だった。

正しいルートは護摩滝の左に見えたロープの箇所で、滝登り自体は、慎重に行動すれば難しいものではなかった。

ガイドブックなどで情報を探ってみると、護摩滝コースを登った記録を見つけることができただろう。

低山やハイキングでも、しっかりと登山情報を調べるように心がけたい。

遭難事故寸前から学ぶ登山の教訓

① コースの下調べと情報収集を、できるだけ多く行なう。
② コースが不明なときは、充分な偵察行動のうえコースを決める。
③ コースを誤ったことに気づいたら、できるだけ早く引き返す。④岩登り、沢登りの基礎的な技術と経験があれば心強い。

(参照:山と渓谷)

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