山で報告されるスズメバチの被害は、夏から冬に移る途上にある10月頃によく起きます。
山中にスズメバチに襲われるというケースは、とにかく多い。
たとえば1997年10月には、宮崎県北部の鏡山を縦走中の中学生の団体をスズメバチが襲い、31人が頭や額を刺され、7人が入院するという被害を出しました。
99年10月には、滋賀県の蛇谷ガ峰の桂谷で登山者が襲われ、ひとりが意識不明に陥り救急車で運ばれています。
また、鳳来の岩場では、フリークライミング中にスズメバチの巣に出くわして刺されたという例も報告されています。
このケースでは幸い一カ所刺されただけで済んだが、もし大群に襲われていたら、岩場に取り付いている状態では素早く逃げることもままならず、大変危険な目に遭っていただろう。
●スズメバチの対処法
スズメバチの成育環境は、都市部や人家周辺、平地、山麓、低山の雑木林など。
活動が活発になる季節は、多くの働きバチが巣を拡大する初夏から秋にかけてが最も危険です。
●スズメバチに刺されるとどうなるか? 人によっては死亡する場合もある
野山に生息する有害生物のなかでも、いちばん危険なのがスズメバチです。
その被害は全国各地におよび、国内では毎年30人~50人もの死者も出ています。
日本最大といわれる(3㎝~4㎝)のオオスズメバチ、都市近郊で近年とくに被害が増えているキイロスズメバチをはじめ、国内には16種類のスズメバチが生息しています。
いずれの種にしても、刺されると激痛を感じ、痛みは時間の経過とともに増します。
また、刺された箇所は熱をもち、数分の間に大きく腫れ上がってきます。
刺された箇所が原因で、発熱するケースもあります。
重症の場合には顔面が蒼白になり、全身に震えがきます。
それから嘔吐、下痢、ショック症状、血圧の急激な低下などの症状も見られ、刺されてから15分~40分ぐらいの聞に、意識不明に陥ってその場に倒れてしまいます。
これはハチ毒に対してアレルギーをもっている人に見られる症状で、「アナフィラキシー・ショック」と呼ばれています。
●スズメバチに刺されて死亡するケースのほとんどは、このアナフィラキシー・ショックによるもの
アナフィラキシー・ショックの人は、一度ハチに刺されると、その毒と反応する抗体ができてしまいます。
1度目は軽症でも、2度目以後にアレルギー反応を引き起こして重症になることが多いので、充分な注意が必要です。
●スズメバチに刺された時の対処・救急法
ハチの毒は水に溶けやすいので、刺されたらすぐに患部を流水で洗い流します。
その際には、傷口から毒液を絞り出すようにします。
口で吸い出してもかまいませんが、携帯用のポイズン・リムーバーを使うと効果的です。
毒液を吸い出したあとには、抗ヒスタミン剤を合んだステロイド軟行(虫刺されのかゆみ止め薬として市販されています)をたっぷり塗っておきます。
さらにぬれタオルや冷湿布で患部を冷やすとラクになります。
もし、アナフィラキシー・ショックの兆候が見えたら、一刻も早く病院で治療を受けることです。
●スズメバチに襲われないための予防法
ハチが人間に襲いかかってくるのは、ほとんどの場合は自分たちの巣を守るためです。
ハチの巣というのは興味を引くものですが、わざわざ自分から巣のそばに寄っていくのはハチにケンカを売っているようなものです。
たとえ見つけても近づかないようにしましょう。
スズメバチの巣は一代かぎりのものです。
どんなに大きな巣でも1年で捨てられ、翌年、また新たに営巣します。
ただし、古い巣のすぐそばに新しい巣がつくられることはよくあるので、古い巣を見つけたら注意するにこしたことはありません。
知らないうちに巣に近づいても、スズメバチはすぐに襲ってくるようなことはありません。もし、うっかり巣に近づいてしまうと、ハチはアゴをカチカチ鳴らしながら周囲を飛びまわって威嚇するので、ゆっくりその場から離れることです。
手で追い払おうとしたり、慌てて逃げ出したりするのは、逆にハチを興奮させることになってしまい、大変危険です。
スズメバチの警告を無視して巣に接近したり、巣をかまったりすると、ハチはいっせいに襲いかかっててきます。
そうなったときには、とにかく走って逃げることです。
慌てて頭を抱えたり、帽子をかぶったりするよりは、一刻も早くその場を離れるにかぎります。
そして、ハチは黒いものに襲いかかる習性があるので、山へ行くときには黒っぽい服は避けたほうが無難です。また、甘い匂いにも反応するため、整髪料や香水はつけないほうがいいでしょう。
なお、アナフィラキシー・ショックは病院の皮膚科で調べてもらうことができます。
一度刺されている人、心配な人は検査を受けることをお勧めします。
●エアゾールタイプの殺蜂スプレー
ハチノックS 100ml 野外活動用ハチ駆除スプレー
アシナガパチ・スズメバチなどの殺虫に効果的。
山道などで、ハチに追いかけられたときなどの護身用として使用する。
使い方は、1回の噴射で使い切るのが原則で、追いかけてくるハチに向けてスプレーしながら逃げる。
とくにスズメバチは大群で攻撃してくることがあるので、噴射しながらすばやく現場から離れるようにする。
1本て十数秒連続噴射ができ、広範囲に拡散するので、広範囲にハチの攻撃を防ぐことができる。