森に入り、ちょっと湿った地面に目をやると、樹の切り株やその根元から蘖(ひこばえ)を見つけることができます。
蘖とは、小さな新芽のこと。
「ひこ」というのは「ひ孫」を意味し、大きな樹からみれば、小さな新芽は孫のように思うのでしょう。
なんだか微笑ましい気持ちになります。
やがてこの蘖が、厳しい生存競争を勝ち抜いて、年輪を重ねて大きくたくましく育って行くことを思えば、その生命力に感動すら覚えます。
何十年、何百年かけて大きく育ち、やがてまた大地に横たわり、無に還ります。
そのあまりに静かすぎる自然の営みが、新しい芽を出し、新しい一歩を踏み出します。
偉大な存在であるほど、歴史に残る出来事ほど、最初は沈黙からはじまります。
派手に飾り立てる必要なんてありません。
あなたは、あなたのままで静かに歩み始めればいい。
蘖の無言の教えには、どんな成功法則の格言もかないません。