京都市の北西にある愛宕山は、標高924mで比叡山と並ぶ古都の背山。
山頂には火伏の神様として信仰を集めている愛宕神社があり、
毎年7月31日に行われる千日詣りは京都市民にとって馴染みの深いもの。
たいていの家庭の台所には「阿多古切符 火廼要鎮」のお札が貼ってあり、三歳までにお参りしたら火事に合わないとも言い伝えられています。
何度来てもこの坂はキツイ
京都嵐山の奥に、清滝というところがあります。
ここが愛宕山の山頂にある愛宕神社への表参道の入り口。
愛宕神社は標高924メートルの山上にあり、かつては修験道の霊場として知られ、現代では火伏せの神様として親しまれています。
京都市内の家庭には、よく「火廼要慎」の御札が柱などに貼られています。私の育った家でもそうでした。
歴史は大宝年間(701)、役小角が愛宕山に登り山嶺を開き、神廟を造立したのがはじまり。
朱色の鳥居をくぐると、舗装路のキツイ坂道がはじまります。
5月の日曜日とあってハイカーも多く、皆がそれぞれのペースで歩いています。
今日は雨上がりのせいか、新緑もいつもより美しく輝き、人々の顔も晴れ晴れとしてるのが印象的だ。
右下には、昔のケーブルの廃線跡が残っている。いつかはここも歩きたいな。
銀色の洗面器が置いてある「お助け水」をすぎると、舗装路は終わります。
十七丁目にある閉店した茶屋の前に、焼けただれた杉があります。
上から地面に至るまで、杉の中心を稲妻が貫通したのだろうか?真っ黒に炭化しています。
このあたりは火燧権現跡と呼ばれていたところ。
案内板によると京洛に火事が起これば社が鳴動することろから、この名がついたのだという。ところどころに社殿の遺構とも言える石垣が残っていて、当時の様子を垣間見ることができます。
歩いていて気がついたが、道標もとても親切な作りになっています。
地元の消防団がたてたものだが、頂上までを40等分して、「7/40」など頂上までどのくらいの位置にいるのかが把握しやすいものだ。
もちろん目的は火災が発生した時のための位置確認のためだが、これはわかりやすくて便利である。
キツイ登りが続くが、この表参道には面白いカタチの巨樹大木が点在し、それらを眺めながら歩くのも楽しい。
上から降りてきたハイカーから「シャクナゲが満開だよ!桜も咲いてるよ!」と声をかけられた。
おおっ~っと気持ちははやるけど、まだまだ序盤戦だ、ゆっくりと歩こう。
参道の大木たちは今
山頂まであと2.5キロまで来ると緩い登り道になります。
ちょっと楽になったかな?
それにしても昔から多くの人々が歩いた道のせいか、登山道(参道)の土は無く、岩が露出し、周りの大木の根がむき出しになっているのが痛々しい。
できればハイカーにも、この異様な現状を意識しながら登ってほしいものだ。
数年後には倒木だらけになっている可能性もある。大木たちはいつまでその巨体を支えていくことができるだろうか?
朽ちかけた大杉のある大杉神社まで到着。この大杉にはすでに2代目の杉が大きく育っている。柵も設けてあるので根が傷むこともないだろう。
500年後ぐらいにもう一度、見に来たいものだ。
標高670メートル付近にある7合目の休憩所にやって来たところで、展望が広がった。
ひんやりとした空気とともに眺める風景は、とっても清々しく気持ちがいいぞ!
水尾参道からの合流点を通り過ぎ、やがて黒門に到着。
黒門の右にある案内板には説明と昔のモノクロ写真が掲載されていた。
その写真をよく見ると、写っている人物は着物だ。
着物姿で登ってきたのかな?それともケーブルがあった時代の写真だろうか?
門をくぐっていくと広場は、満開のシャクナゲと八重桜でかなり賑やかな印象を受ける。近くのベンチで一休みしたあと、山頂の神社への石段を登ろう。
愛宕神社へは、ドライブウエイがあるわけでもないのに、かなり立派な社殿が建っています。
朱色の派手なものでなく、無垢の木肌を活かした素朴な造りが好感が持てます。
月輪寺の巨樹
お参りを済ませた後は、石段の東側の山道を月輪寺目指して歩きます。
最初は展望を眺めながら歩がやがて、ごつごつとした大岩が露出した細い登山道を下ります。
さきほどまでの表参道の喧噪とは違って、ものすごく静かな道だ。
自分の足音と野鳥のさえずりがはっきりと聞こえます。
なんだかいい気分だ。
淡々と下っていくと、前方に白い大きなもやもやしたものが立ちふさがっているけど?
ん?なんだろうと近づくとそれは、シャクナゲの群落であった。
白く見えたものは、花で地面にも花びらがたくさん落ちていた。
花の時期としてはすでに終わりかけているが、それでもこれだけ集まっていると迫力があります。
そのシャクナゲのすぐ先に月輪寺があります。
境内を通過して行くと、すぐにカエデの巨木があります。
この道は何度も通過しているのに、今まで全くこの巨木の存在に気がつかなかったのが不思議なくらいだ。
あとはジグザグに下り道を歩き、やがて月輪寺登山口に到着。
この先は林道を清滝まで歩くことになるが、その前に空也滝に立ち寄ろう。
沢沿いの細い道を上っていくと、鳥居が現れてその先に滝があります。
10世紀頃、嵐山に居住した空也上人が霊場として開いたと伝えられ、現在も滝付近は信仰の対象および修験道の霊場として参拝客が絶えないという。
清滝川支流堂承川の大杉谷にから、高度約250mから落下する水流は迫力満点。
岩をくりぬいたところには、不動明王や役行者の像が祀られていて、なんともいえない敬虔な雰囲気が漂っています。
さて、滝を堪能した後は清滝までの道をのんびり歩くとしよう。