さまざまな伝説、伝承のある日本列島。
天狗が飛ぴ、鬼が笑い、大男が歩〈山の世界。
そんな異界ワールドをご紹介します。
■北海道
●日高山脈 北海道日高地方 『オキクルミ神話』
アイヌに伝わる勇敢な神オキクルミ。
ふだんは、魚のあふれる美しい川のそばで、刀の鞘に彫刻をして暮らしているが、人間のためにために、悪い神と闘うなど、多くの神話が残っている。
●日高山脈 北海道日高地方 『蛇の思返し』
日高の山奥に暮らす男が、小さな蛇の命を助けたところ、無事に育ったその蛇がお礼に現われて、自分の両目玉を置いていった。
男が目玉をしまっておいた家の蔵は、いつも美しい宝や食べものであふれ、男は豊かに暮らすようになったという民話がある。
●義経山 北海道松前郡松前町 『義経流離譚』
奥州|平泉て戦死したとされる源義経には、その後、東北から北海道をへてモンゴルまで逃げのびたという伝説もある。
この山は、義経一行が野宿をして、陣屋を張ったといわれる山。
■青森県
●焚珠山 青森県南津軽郡浪岡町 『釈迦の墓』
この山には釈迦の慕があるといわれ、若き日の釈迦が日本て惨行し、インドで布教に努めたあと再び来日し、ここで一生を終えたという伝説がある。
■山形県
●鳥海山 山形県飽海郡遊佐町 『鬼伝説』
昔、この山には、手長足長という鬼が棲んでいた。
悪さをするので、天台宗の高僧慈覚大師が不動尊像に祈ると、尊像の目から閃光が走り、鳥海山のてっぺんを鬼ともどもふっとばしてしまった。
のちにそれは飛島になったという。
■岩手県
●五葉山 岩手県釜石市 『霊峰』
昔、伊達藩の重要な林業資源の「御用山」たったのが、現在の山名「五葉仙」になったという説もあるか、南西に連なる副峰、黒岩は、巨岩が林立し、神がその巨岩に手で封印をしたときの五本の指をあらわしているという説もある。
●遠野地方 岩手県遠野市 『河童淵』
河童の伝説があり、地元、猿ガ石川の岸辺では河野)足跡かよく見られたというし、馬を淵のなかに引きずり込もうとする河童の話も残されている。
■福島県
●安達ガ原 福島県二本松市 『鬼婆伝説』
この地域の岩窟には、京の都まて噂かしれた鬼婆か棲み、旅人を泊めては人肉を食っていた、たか、真白弓観世音菩薩の力により成仏し、今も観世寺山門近くに残る、黒塚に葬られたという。
●志津倉山 福島県大沼郡昭和村・三島町、河沼郡柳津町 『妖獣・カシャ猫伝説』
この山には、巨大な一枚岩の雨乞岩や不気味な猫啼岩、屏風岩などの岩場かある なかでも、猫啼岩には妖獣カシャ描が棲み、葬式のときには遺体をさらいにくるという
■新潟県
●佐渡島 金北山新潟県両津市・佐渡郡相川町・金井町 『鬼伝説』
佐渡島にはかつてたくさんの鬼か棲んていた。
困った人間に頼まれた金北神社の神か鬼と知恵比べをし、鬼は、一夜のうちに、金北神社の百段の階段をつけるという知恵比へに負けて、それ以降、姿を現さなくなったという。
●おとわ池 新潟県佐渡郡佐和田町 『竜神伝説』
おとわという娘が、山中て人とはぐれ、ある池のほとりにいたところ池の主の竜神の声かして、跡継ぎになるように告けた。
それから3日後の夜、娘は櫛や小袖を残して、達れ去られていた。
現在でもその形見は長福寺に保存されている。
■栃木県
●那須野原 栃木県那須郡那須町 『金毛白面九尾の白狐』
「玉藻の前J という美しい女性に化け、帝をまどわしていた狐が、正体がばれて、那須野原て退治された。
しかしその後、狐は人を寄せつけない、毒気をはなつ殺生石となり、今なお異臭をはなっているという。
●戦場ガ原 栃木県日光市 「男体山と赤城山の争い』
昔、日光男体山の神と群馬日の赤城山の神が領地を争って戦をした。
赤城はムカデを、男体山は蛇を、それぞれつかわして決戦したのが、今の戦場ガ原で、その後、和平の会議を開いた所が勝負ガ浜で、今の菖蒲ガ浜といわれている。
■東京都
●今熊山(呼ばわり山) 東京都八王子市 『霊山』
1500年以上も昔、后ガ行方不明になった帝が、夢のお告げにより、この山に登って名前を三度呼んだところ、后と無事再会できたことから、以後、失踪者や家出人などを、家にもどしてくれる、霊妙な山といわれるようになった。
■神奈川県
●大山 神奈川県伊勢原市・厚木市・秦野市 『天狗伝説』
東大寺別当良弁により、天平勝宝年間に関山され、江戸時代から大山詣でとして、信者の登山でにぎわった。
真言密教の修験道場であり、修行をする山伏の姿かり多くの天狗伝説がある。
■群馬県
●榛名富士・ひともっこ山 群馬県群馬郡榛名町 『巨人伝説』
昔、榛名と駿河の巨人が、ひと晩で山をつくる競争をした。
榛名の巨人が、あともうひと盛り土を載せようとしたときに、一番鶏が鳴き、その土を落としてしまった。
それが今のひともっこ山であり、できかけの山が榛名富士といわれている。
ひと晩で、富士山を造った駿河の巨人に負けた榛名の巨人は、三日三晩泣きつづけ、その涙でしらじ池ができたという。
■富山県
●黒部渓谷 富山県下新川郡宇奈月町 『祖母谷・祖父谷』
ある男が、やきもちやきの妻から逃れるため、暴風雨の日に家出をした。途中、男は右の谷へ、あとを追ってきた萎は、左の谷へ入ったが、ふたりとも墜死した。その後、谷は祖母谷、祖父谷と呼ばれるようになったという。
●五箇山 富山県東砺波郡平村 『天柱石』
この山の一角にそそり立つ天柱石は、神の降臨に使われた天之浮船のような奇岩で、役行者がこの岩上で座行をしていたところ、天から童子が、地から童女が現れて修行の手助けをしてくれたという説話がある。
■岐阜県
●位山 岐阜県大野郡宮村・益田郡萩原町 『霊山』
古代から霊山として崇拝されてきた山で、麓の飛騨一宮水無神社のご神体。山中には巨岩群があり、めだつものには名前がある。昔から、人びとに崇められてきた、天の岩戸と呼ばれる大きな岩組もある。
●高賀山 岐阜県郡上郡八幡町・武儀郡坂取村・洞戸村 『鬼退治の伝説』
古くから山岳信仰の山として知られる山。
昔ここに、変幻自在に姿を変える鬼が棲んでいたが、藤原高光という武士が、神仏の夢のお告げにより、この鬼を無事に退治できたことから、麓に星宮神社を建立したという。
■静岡県
●秋葉山 静岡県周智郡春野町 『天狗伝説』
三尺坊という山伏が、諸国をまわる旅の果てに秋葉山に入ったことから、天狗信仰が生まれ、町には大天狗面などが飾られている。この山にある秋葉寺では、千年もの伝統があると伝わる火祭りが有名。
■愛知県
●基盤石山 愛知県北設業郡設華町 『天狗伝説』
碁の好きな天狗と、村で碁の天才といわれる男が対局した山。
山頂に横たわる花開岩は、勝負に負けた天狗が、悔しがってひっくり返した碁盤だと伝えられている。その山頂には、多くの天狗が往来し、草木が生えなくなったという。
●石巻山 愛知県豊橋市 『霊峰』
整った円錐状の山容をもつ霊峰。標高は358mだが、かつては修験道の行場として栄え、不動堂や大天狗の石碑、神の磐座ともいわれる大岩壁などがある。
●猿投山 愛知県豊田市 『霊山』
三河三霊山のひとつ。
この山で毒蛇に咬まれて死んだとも伝わる、オオウスノミコトのゆかりの山で、この皇子は麓の猿投神社に祀られている。
オオウスノミコ卜の陵墓と伝わる山上古墳もあり、カエル石、御船石などの奇岩がある。
●尾張富士 愛知県犬山市 『山の背比べ・人造ピラミッド説』
美しい円錐形の山。
昔、隣の本宮山と背比べをして負けてしまい、この山の神が嘆いて、修行中の尼僧の夢枕に立ったことから、村人が、木曽川の河原の石を山頂に積み上げたという。
また、古代の人造ピラミッド説もある。
■滋賀県
●三上山滋賀県野洲郡野洲町 『ピラミッド説』
円錐形の秀麗な山容で、古代人が造った人工造山説、ピラミッド説がある。
近江富士とも讃えられるこの山は、麓の御上神社のご神体体となっている。
■京都府
●鞍馬山 京都府京都市 『天狗伝説』
かつてたくさんの天狗が棲んでいたという伝説があり、若き日の源義経、牛若丸もここの天狗に兵法を習ったという。
奥の院魔王堂近くには、大天狗が降リ立ったという巨大な老杉があったが、台風てす折れてしまい、現在はない。
■兵庫県
●六甲山 兵庫県西宮市・神戸市 『古代都市伝説』
兵庫県西宮市から神戸市にかけて巨石が点在する六甲山系、越木神社のこ神体である甑(こしき)岩や、北の座と称される数本の自然石を組み合わせた岩塔などは、古代都市の遺跡だとする説がある。
■広島県
●のうが高原 広島県廿日市市 『ピラミッド説』
壮大な巨石群がひろがり、古代のヒラミッドの遺構という説がある。
巨石を階段状に五段に積みあげた、岩戸風呂とよばれる巨石群や、高貴人墳墓と名づけられている、巨大な岩室などがある。
■山口県
●鬼ガ城 山口県下関市・盤浦郡豊浦町 『鬼退治伝説』
鬼の伝説の多い山。大江山の酒呑童子の仲間、霞隠鬼(かいんき)がこもっていたという説や、里で美しい娘をのぞきみしていた鬼が、片目を矢で射られ、血の跡を追ってゆくと、この山で絶命していたなどの伝説がある。
■香川県
●女木島 香川県高松市女木町 『桃太郎伝説』
昔話の桃太郎が、鬼退治に向かったという通称鬼ヶ島。
島には鬼ヶ島大洞窟などがある。
桃太郎伝説は古くから瀬戸内海に出没した海賊を退治した、勇者の伝説だろうという説もある。
■愛媛県
●石鎚山 愛媛県西条 『霊山』
西日本最高峰のこの山は修験道の山として、古来より霊山として崇拝されてきた。
7月のお山開きには、三体のこ神像を信者たちが頂上社運ぶ。
■福岡県
●英彦山 福岡県田川郡添田町・大分県下毛郡山国町 『天狗伝説』
日本三大修験道場として知られる山。
杉の老木が多いこの地域は、月の照る晩に、なぜか突然山が震動し、樹木の倒れる音が聞こえる「天狗倒しの怪」がたびたびあったという。
■大分県
●伐株山 大分県玖珠郡玖珠町 『巨人伝説』
昔、この地方に樹齢8万年といわれる大楠があり、玖珠盆地にはまったく陽が当たらなかった。
そこて村人が、巨人に頼み、その大楠を切り倒してもらった。
このときの切り株が現在の伐株山、倒れた楠の梢の葉形がついた場所が博多だという。
■佐賀県
●領巾振山 佐賀県唐津市 『佐世姫の悲話』
飛鳥時代、唐津の長者の娘佐世姫が任那国へ向かった大伴狭手彦との別れを悲しみ、海に向かって領巾(ひれ)を振り絞け、そのまま石と化してしまったという伝説。
以後、この山は領巾娠山と呼ばれるようになった。