健康にもよさそうだからと山歩きを始めた人は、中高年の登山者にはとくに多いはずです。
たしかに、一般論としては山歩きは健康によいと言われています。
低山の樹林帯のなかを歩けば、フィトンチッドを全身に浴びての森林浴にもなります。
高山の森林限界の上では、スモッグや排気ガスの層を通らない純粋の紫外線を浴びての日光浴もできます。
うまい空気をフルに吸って歩くから、格好のエアロビクス運動になります。
当然、血液の循環もよくなるから、肩や腰のこりからも縁遠くなります。
歩くという無理のない運動を長時間続けることで、体内の皮下脂肪がほどよく燃えてくれるから、でつばったお腹がいつのまにか少しずつへこみはじめダイエットになります。
さらに、歳をとっても自分なりのペースで楽しめるというのも大きな魅力です。
山歩きは心身ともにリラックスして登るものです
肉体面だけではなく、たどりついた山頂からの大展望に思わず歓声を上げれば、心が解放されてリラックスできるでしょう。
気持ちの通じあった山仲間ができれば、山でも街でも気のおけないコミュニケーションがもてて、心理面での健康を保つのにもいたって効果的というメリットも有ります。
ただし、健康によくない山歩きもあります。
山登りから帰ってから、長いあいだ筋肉痛に悩まされたりするような、自分の体力や技術の限界を超えた山登りをした場合は健康登山とはいえません。
「健康登山のキーワードはゆとり」
山を楽しむには、ゆとりをもって山を歩けるかどうかにかかっているといっていい。
山歩きのゆとりには三種類あります!
時間のゆとり、体力のゆとり、そして気持ちのゆとりでです。
時間のゆとりをもつためには、山行計画を立てるときに、ガイドブックのコースタイムをそのまま引きうつすのではなく、たとえば3割増し5割増しにしてみるのもひとつの方法です。
そうすれば、下山口の最終バスに間に合わないからと、駆け足で下るなんていう危険なことはしなくてすむからです。
体力面では、日ごろからのトレーニングも大切ですが、もうひとつは自分の体力にあったコースを選び、自分の体力にあったペースで歩くことです。
友人に誘われたとしても、体力の限界を超えた長い距離や高い山へ無理をして挑戦しても、それは決して健康によい登山とはいえません。
そして、行動中もトレッキングストックを利用して体力を補ったり、ザックも必要以上の荷物は入れずにできるだけ軽くするなど、体力のゆとりを生む工夫も大切です。
特にザックの中身は、ベテランでも毎回工夫をされているぐらいノウハウには、奥が深いもがあります。
時間にゆとりがあり、体力にゆとりがあれば、自然に気持ちにもゆとりが生まれて、健康によい山歩きを心ゆくまで楽しめるというわけです。
健康登山はゆとり登山と、肝に銘じておこう。
ゆとり登山には、山行のタイミングを選ぶことも大切
時間に余裕のある人なら、平日山行がおすすめです。
電車もバスも、そして休日に賑わうような山もすいているからです。
自分だけで、あるいは自分たちだけで山のすばらしさを独占できて、いうことなしということになります。
小屋泊まりの山行でも、土、日曜を避けたゆとりのプランなら、寝床のスペースもたっぷりとってもらえるし、同宿の登山者や山小屋の親父さんとものんびりおしゃべりができます。
近ごろは、よく夫婦ふたり連れで山を歩いている人を見かけるようになりました。
これもゆとり登山のひとつだろう。
夫婦なら気心も知れているし、相手の体力もわかっているから、これ以上の山仲間はないといってもよいかもしれません。
家でも「今度はどの山に行こうか」などと、会話も盛り上がったりするでしょうね。
そうなれば、肉体面の健康と心理面の健康に加えて、家庭の健康にも山が役立つということになるのではないでしょうか。