今から23年前、20代(登山歴10年)のときの苦い体験をしたAさん(50代男性)の話~~~。
「遭難」といっても、本当に初歩的なミスでした。
新婚旅行の途中、南九州の開聞岳に登ったのですが、鹿児島に着いたのが正午ごろ、開聞岳登山口に着いたのが日時近かったと思います。
そのころ日本百名山にはまっていた私は、どうしても登りたかったので、遅いとわかっていながら登り始めてしまいました。
まったく山をやらない妻は心配そうでしたが、ついて来てくれました。日月だったので日が暮れるのは早く、山頂に着いたのは日没ごろでした。
東シナ海に沈む夕日はきれいでしたが、下山途中にどんどん暗くなっていきました。そしてとうとう中腹で真っ暗になり・・・
午後遅い時刻に入山して山中で真っ暗に
登山口で待つタクシー運転手さんが通報
とうとう山中で真っ暗になってしまった。
懐中電灯もなし。
月明かりでかすかに道が見えるのだけが頼りでした。
登山口で待っていたタクシーの運転手さんが、私たちが下りて来ないのを心配して警察や消防に連絡してくれました。
やがて下のほうから、スピーカーで私の名を呼ぶのが聞こえてきて、月明かりとその声の方角を頼りに少しずつ歩き、22時ごろ、どうにか下山できました。
警察・消防のかたと、タクシーの運転手さんにお詫びとお礼を言ったのはいうまでもありません。
妻には「先が思いやられるわ。山はこりごり。ひとりで行って」と言われてしまいました。以来、結婚記念日のたびに、開聞岳の避難を思い出します。
思うに、私のように百名山病にかかったために遭難した人も多いのではないでしょうか。以後、百名山はのんびり登ることにしています。(横浜市神奈川区・Aさん(男・50代)
本人が自力下山可能でも、遭難事故になる場合がある
山岳遭難のなかには、このような「遭難騒ぎ」とも呼ばれる下山遅れの事例が頻発している。
自称「百名山病」のAさんは、コースタイムを見て、、ぎりぎり明るいうちにもどって来られると判断したのだろう。
若気の至りで、思い切って突っ込んでしまった。
ところが妻は登山が初めてで、しかもスニーカー履き。
歩くのがとても遅かったそうだ。
標準コースタイムでは登り2時間ほどだが、そのときは頂上まで3時間もかかった。
途中で登頂をあきらめて引き返していれば問題はなかったが、そうさせなかった「百名山病」に、やはり問題があったのだろう。
「どうして雨具、ヘッドランプ、非常食を持っていかなかったのですか?」というと「開聞岳を楽勝の山とみていた。妻の歩く力を知らなかった」という。
この一件で反省したAさん、現在は「迷ったら、やめる、登らない」を遭難防止のためのモットーとしながら登山を続けている。
遭難事故寸前から学ぶ登山の教訓
①事前に山行計画を立てる。
②行動計画(タイムテーブル)を作成して、時間的な見通しをもつ。
③弱い人に合わせた計画にする。
④メンバー間の意思統ーをする。
⑤必携用具(雨具、ライト、地図、非常食)を持っていく。
(参照:山と渓谷)