テント山行の魅力はなんと言っても混雑時の山小屋の喧喋とは無縁の、自分ひとりの空間を作れること。
だれにも邪魔されずにのんびり横になって山行記録をとったり、自分の好きな小説を読んだり、あるいは、テントから顔だけ出してスターウォッチングを楽しんだりするのは何ものにもかえがたい山での贅沢だろう。
テント山行の魅力はそれだけではない。
薄い生地一枚を通して、風の音、烏の声などの自然の息吹をじかに味わうことができるのはテント山行の最大の魅力です。
大地を寝床に自然に抱かれて眠るという登山本来の目的は、テント山行でこそ完成する
誰でも想像することですが、テント山行というと何十キロもある重いザックを背負って歩くという印象から、敬遠する人も多いかもしれない。テン卜はグループ登山の共同装備として、分担して初めて持っていけるものだという考えが根強くあるようです。
最近のテントは、軽量かつ丈夫にできていて、ひとりでもそれほど負担に感じません。
テントの組み立て方も、ひとりで簡単に設営ができ、居住性や耐風性、自立性にもすぐれています。
山小屋や避難小屋で自炊山行の経験を積んできた登山者には、それほど抵抗なく背負える重量ではないでしょうか。
しかし山小屋泊に比べると、ザックが重くなるのは事実で、増えた分は、魅力のあるテント山行のためにガマンするか、あるいは、思いきってほかの登山装備を必要最小限におさえたり、初めから短かいコースの設定を考えるなどの工夫が必要になります。
快適なテント生活をするためのポイント
実際に山中にテントを張る場所は、どこに張ってもいいわけではありません。
キャンプ地はきちんと指定されているばかりでなく、国立公園内では指定地以外は全面的に禁止されています。
山岳地のキャンプ地は、ほとんどが山小屋の周辺にあり、管理も山小屋の人が行なっています。
キャンプ地の基本的な条件として、水場とトイレが設備されていなければならないからです。
自然保護上、指定された所にテントを張らなければならず、指定地以外に張ると、山小屋の管理人や自然保護指導員に撤去を命ぜられるので注意しよう。
山を歩き続け、指定キャンプ地に着いたら、そのまま勝手にテントを
らずに、管理している山小屋などに許可を申し込みます。
だいたい一人500円ぐらいの使用料が必要ですが、無料のところもあります。
テントを張る時には、最初に整地を入念にすること
テントを張ってから、中で寝転んでみた時に、背中に石があたるようなら場所を整地しなおしたほうがいい。
ただし、雨が降り出した時は、整地はごくかんたんにしてなるべく雨
に濡れないうちに張るのが先決です。
管理されている幕営地は、地ならしがされている所がほとんどだですが、ときどき傾斜している所もあります。
傾斜しているところにテントを張ってしまうと、寝ているうちに体がずれてくるのでなるべく平坦地を探そう。
テントを張る時は、人口は風があたらない方角にするべきだが、山ではいつも一定方向に風が吹いているわけではないので、入り口を開けた時、眺めのよい向きにするのもひとつです。
一人テント泊のマナーと心得
ひとり用のテントは、いうまでもなく狭いので、テント内では整理整頓を心がけたい。
炊事の際はコンロを外で使用し、酸欠をふせぐのが鉄則。もし雨などで中で使う必要がある場合は、ベンチレーターを開けて十分な換気をしないと二酸化炭素中毒で死に至ることがあります。
テントが狭いからといって、コッヘルやらコンロやらを外に置きっぱなしにしてはいけない。
まわりに夜行性の野生動物が、ウロウロしていることもあるからです。
テント収納の際は、固定用のペグなどの忘れ物に気をつけ、ゴミはかならず持って帰るようにすること。
テント山行の場合、天候の関係でかならずしも指定キャンプ地にたどり着けないことも・・・その場合どうする?
指定のキャンプ地に辿りつけなかった場合は、つぎのことに気をつけてビバークするとよいだろう。
①河原を避ける。
水があるからよさそうと思われがちだが、増水した時に水の下になる可能性もある。それに水の音がうるさくて安眠できない。
②崖下を避ける。
いつなんどき、落石があるとも限らない。とくに雨の降ったあとは地盤がゆるむので避ける。
③稜線を避ける。
稜線は展望はよいが、強風が吹きがち。テントをまるごと吹き飛ばされないためにも稜線から少しでも下がった風下側にする。
④大木の下を避ける。
これは稜線でも言えることだが、雷が落ちた時、被害をこうむる可能性が高い。また枯れ枝が落ちてテントに穴があくだけでなく、ケガをすることもある。
⑤沢筋には入らない。
河原とも共通するが、沢筋では雨が降った後など、鉄砲水におそわれる可能性がある。
ほかに、雪渓の途中や雪崩の起きそうな所には張らないようにする。
テント泊で連泊するのも、意外な発見ができておもしろい
テント山行も慣れると、しだいに一泊、二泊、三泊と、連泊したくなるものです。
テントでの連泊というと、縦走するプランが思い浮かぶが、ひとり歩きの登山の場合には、ひとつの地点にテントを張り、のんびりと過ごすことを考えてみたい。
定着テントでどこへも行かずに横になっているのもよいし、縦走では歩けないエリアを散策気分でうろついてみるのもよいだろう。
意外な発見があるかもしれません。