中高年登山者の遭難事故を防ぐ、山行中の病気の予防と対応(1)

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山での病気というと、疲労や激しい温度差などが要因となって風邪の症状が出ることが多いが、ほかにも注意すべき病気がいくつかあります。
中高年登山者がとくに注意すべき病気や、頻度が高く、重篤になると生命の危機につながる病気を中心に記載しています。

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中高年登山者は、脳卒中や心臓系疾患に注意

脳卒中心臓系疾患は、発作による突然死もありうる恐ろしい病気です。

しかし、自覚症状なしに突然発作が起こるのはまれであり、日頃から脳卒中になる危険因子をもっている場合や、メディカルチェックで心臓系疾患の疑いがある場合が多いもの。だから事前にメディカルチェックを受け、主治医の診断を仰いでいれば、防げる確率が高いのです。

また、山のなかでは、沢の水などによる細菌性の下痢や食生活の変化による下痢を起こすことも多い。軽症のうちに適切な処置をとらなければ、体力消耗が進み、自力で下山することができないばかりか、遭難や転落事故などにつながるおそれもあります。

日本の山でも高山病にかかる可能性があるのは常識であり、高山病で夏山診療所を訪れる人はかなりの数になります。とくに、槍ガ岳や奥穂高岳など、標高の高い山の診療所の場合、内科系疾患のなかで高山病がいちばん多く、高山病は、初期段階で予防・対処ができれば心配ないが、進行すると生死に関わる肺水腫や脳浮腫になるおそれがあります。

登山中というのは、日常と大きく環境が異なります。病院にすぐに行けるわけではない。気温差が激しく、体力も消耗しているため、抵抗力が弱っている。いかなる病気にせよ、小さな症状や前兆を見逃すことなく、早め早めの対処を心がけたい。

脳卒中への予防は、手足のしびれや言葉のもつれなど、前兆は絶対見落とさないこと

[症状]
前兆は食器を落とす、言葉が出ないなど

脳卒中を大別すると、脳梗塞と脳出血(脳内出血・クモ膜下出血)の2種類がある。

脳梗塞は、脳の動脈がつまって血流がわるくなったり、あるいは途絶えることにより脳組織が破壊される病気だ。比較的安静時に起こりやすく、症状がゆっくりと進行することが多く、2、3日以内に症状が出そろう。

食事中、急に食器を落として、数分間うまく握れなかった、急に言葉が出てこなくなったが2、3分で治った、片目が数分間見えなくなったというような症状のある、一過性脳虚血発作が前兆となる場合もある。

脳出血は、運動中など血圧が上昇しているときに多く起こり、脳梗塞より急激な経過をたどることが多い。症状は出血の部位や程度によるが、急な頭痛、吐き気、嘔吐、めまいなどを訴え、意識障害が進む。

[予防]
メディカルチェックと水分補給

脳卒中を起こしやすい人は、高血圧症、脂血症、高年齢などの危険子を必ずといってよいはどもっている。該当する人は、山行前に、メディカルチェックを受けることが大切。

また、登山中は、ふだんよりも多めに水分補給をしよう。

脱水によって血液の粘度が増し、脳内の血管に血栓ができることが原因となって、脳卒中が起きる可能性もある。標高が高い場合や高齢者は、とくに多めに水分を取るように心がけよう。

[対応]
前兆があったらすぐに救助依頼

重要なのは、前兆を見逃さないこと。
とくに脳梗塞の場合は前述のような前兆がある。

手足がしびれた、ろれつが回らないなどという兆候があったら、すぐにヘリコプターを依頼するなどして病院へ運ぼう。

このような前兆を、本人はなかなか認めたがらない。
単なる疲れだとおざなりにすることなく、仲間同上がたがいの体調をチェックする習頂をつけることも大切だ。

前兆が現われた時点で治療を受ければ、助かる場合が多いが、前兆を見落として、出のなかで倒れてしまってからでは遅い。

救助を待っている間に、アスピリン(脳梗塞の処方薬として使われているバファリン81など)を噛み砕いて飲むことも有効的だ。

狭心症・心筋梗塞は事前のメディカルチェックと医師の判断が肝心

[症状]
前胸部鈍痛、さらにはショック症状も

狭心症には、運動中に起こる労作性と安静時性がある。どちらも、前胸部の広い範囲に、鈍痛や圧迫感を感じ、5~10分で収まる。

労作性狭心症を繰り返し、悪化すると、心筋梗塞につながる場合がある。心筋梗塞は前胸部の激しい痛みが長く続き、それが繰り返す。冷や汗や吐き気、ショック症状を伴うこともあり、発症初期の10%の人が、数時間後に死亡している。

[予防]負荷心電図と医師のアドバイスを

心臓系疾患を抱えている人は、ハードな登山を行なう前に、必ずメディカルチェックを受けよう。とくに、負荷心電図が大切である。これは、軽い運動をして心臓に負荷を与えながら心電図を計測するものだ。登山に近い状態での心肺機能をチェックできるので有効だ。負荷心電図に異常がなければ、安心して登山へ出かけてもよいだろう。

異常があった場合は、心エコーや冠動脈撮影を申し込むとよい。山中で突然の発作が起きた場合、取り返しのつかないことになってしまう。事前に、体調をチェックすることがなによりも大切だ。

心臓系疾患に限らないことだが、主治医に相談する場合は、なるべく具体的な話をするように心がけよう。登山とひと口に言っても、日帰りハイキングから何日にもおよぶ長い登山、高所登山などさまざまだ。どこの山に行くのか、その山の標高や行程内容をくわしく話し、現時点の体調で行くことができるか、必要な薬や、山中に気をつける点などについての具体的なアドバイスを受けよう。

[対応]アスピリンとニトログリセリンを

万が一、山中で発作が起きてしまった場合は、一刻も早く病院に運ぶ必要がある。その間、安静にして救助を持つこと。心臓系疾患の既往症のある人は、ニトログリセリンを持っている場合が多いだろう。ニトログリセリンを舌の下に入れて服用するとよい。ただし、この薬は血管を広げる作用があり、脳の血管も広がるためにふらつくおそれがある。足場のしっかりとした場所で服用しよう。

ニトログリセリンを持っていない場合は、血液の粘度を低下させる作用のあるアスビリンを噛み砕いて飲むとよい。これは脳梗塞にも当てはまることだ。ただし、喘息などでアスピリンのアレルギーがある場合は、飲んではならない。

下痢になったら水分補給が第一。経口補液が有効

[症状]発熱や嘔吐をともなう場合もある

登山中に起こりうる可能性の高いものとして、感染性下痢症と過敏性腸症候群を取り上げよう。

感染性下痢症は、ウイルスや細菌のある沢の水などを飲んだ場合や腐ったものを食べた場合などに起こりうる。食欲不振、軽い発熱、嘔吐をともない、一日数回から数十回の下痢がある。

過敏性腸症候群は、精神的ストレスが原因。
日常生活と違う環境に身を置き、登山に体力的・技術的に不安があって、起こることもあるだろう。この場合、便秘のような症状になる場合と下痢になる場合がある。

また、極度の疲労により消化器宮が弱まり、下痢を起こす場合もある。

[予防]生水と腐りやすいものに注意

水場と指定されているところ以外の水は飲まないこと。

腐りにくい食品を持っていくことが、もっとも大切。

とくに、夏場のザックの中は、一日中高温で蒸されているので気をつけよう。また、体力消耗により、消化器官が弱まっている場合もある。消化のよいものをとり、よくかんで食べるように心がけよう。

[対応]経口補液で水分と塩分の補給を

下痢の場合、まずは、体から失われた水分と塩分を補給し、安静にすること。

下痢は、体内にわるいものが入ってしまい、それを排出しまうとする体の防衛反応である。

あるいものを出し切らなければならないので、むやみに下痢止めを飲まないように。どうしてもおさまらない場合に、下痢止めを服用しよう。

水分補給の際は、経口補液を飲むと効果的。

経口補液というのは、下痢による脱水で失われた塩分が、体に吸収されやすいように調合されているもの。市販薬ではないので、病院で処方してもらうとよい。経口補液は、不衛生な環境にある途上国で積極的に使われているものなので、途上国でのトレッキングを考えている人は、とくに必要だろう。

経口補液がない場合は、水に塩と砂糖を溶かして作ることもできる。

経口補液は、病院で受ける点滴と同じ役目をするもの。いちどきに大量に飲まずに、少しずつこまめに飲むようにしよう。

※参考/山と渓谷

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