恐山は、地獄の相が現われたようなあの世への人口。
この世に極楽浄土はなくとも、地獄は現に存在する」ということだろうか。
北の最果て下北の地、宇曽利山の火日原湖のほとりに、硫黄臭漂う別世界があった。
縁起によると、平安時代の天台僧円仁の夢の中に現われた聖者が「そこに地蔵を刻み、仏道を広めよ」と告げたことに始まると
いう。
しかし、もとは古代人の素朴な山中他界観に根ざしたものだったにちがいない。
ともあれ、中世には死者供養のほか、仏教各宗派の修験の行場となり、地蔵講の隆盛もあいまって、天然の奇観に長き信仰の跡が積み重ねられることになった。
「三途の川」に架かる赤橋を渡ると、そこに広がるのは、草一本生えないモノトーンの景観。
血の池地獄、釜ゆで地獄、無間地獄…。
傍らでは、幼き亡者にたむけられた風車がカサカサと回る。ひんやりとした冷気に包まれ、深い霧が立ちこめる湖畔に立つと、そこにはあの世への小舟が一艘…。
恐山は、訪れるものを白日夢へと誘う異界の仮想現実装置なのかもしれない。
●ひとくちメモ
恐山は、高野山、比叡山と並ぶ日本三大霊山のひとつ。恐山の境内には、それぞれに効能の異なる4つの薬湯があり、参拝者は自由に入浴することができる。
●アクセス
下北交通大畑線田名部駅から下北バスで恐山下車。
車の場合、国道338号線から、むつ恐山公園大畑線で、恐山・宇曾利山湖方面へ。田名部駅から約10キロ。
●観光情報
大尽山などの外輪山と釜臥山などの寄生火山を含めた一帯を恐山と呼ぶ
●聞合せ先 むつ市役所
●地形図 2万5000分ノ1=恐山
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