春になり、気温が上昇していくと野山も活気づいてきます。
同時にやっかいな寄生虫の活動も活発になるので、ハイキング中の衣類には気をつけた方がいい。
特に雨上がりの登山道や湿った道などでは「ヤマビル」に気を付けたい。
ヤマビルに血を吸われても、痛みは全く感じないので、たいていは下山後に
赤くなった靴下を見てびっくりと言うことが、多いかもしれません。
ヤマビルの生態
ヤマビルは、パンツのすその隙間などからひそかに侵入し、感触もないまま1時間以上も動物の血を吸い続けます。
一度吸われると血が止まらず、1カ月近くかゆみが続く場合もあるやっかいなものです。
特に梅雨の季節は動きも活発になるので、注意してほしい。
陸上にすむヤマビルは「山の吸血鬼」とも呼ばれています。
ミミズなどの仲間で体長3~5センチ、伸びると5~7センチ程度になる。円筒形で吸盤を持ち、尺取り虫のように進む。湿気の多い場所を好み、落ち葉や小石の下などに潜む。春から秋にかけての気温20度以上で、雨天や雨上がりの湿った蒸し暑い日によく見かけます。
拡大していくヤマビルの生息範囲
ヤマビルはもともとは山奥に生息し、シカやイノシシなどの血を吸っていました。
しかしシカなどが餌を求めて里山に出てくるようになり、ヤマビルも生息地を広げたのです。
特に鹿は山によっては駆除が禁止されているため、どんどん数が増えて他の山にまでヤマビルとともに移動していくのです。
猟師の高齢化や減少も、影響しています。
ヤマビルの生息域は、秋田県から沖縄県までほぼ全国で確認されています。
例えば神奈川県では、里山とそこに隣接する住宅地でも吸血被害が多く報告されています。
発熱や入院するケースもあるヤマビルの怖さ
ヤマビルの怖さは、気付かないうちに近づき、長い時間吸血すること。
ヤマビルの吸盤の周囲には、動物や人の息に含まれる二酸化炭素(CO2)や体温などを感じるセンサーが付いており、これを手掛かりに近づいて吸い付く。吸盤に並んだ細かい歯で皮膚を切り裂くのです。
人は出血すると、フィブリンという血液を凝固させる物質が働き、かさぶたとなって血を止めます。
しかし、ヤマビルが吸血中に出す「ヒルジン」という物質はフィブリンの働きを妨げるので、少なくとも1、2時間は出血し続けてだらだらと血が流れ続けます。吸血されている間は、蚊に刺された時のように気付くケースはほとんどありません。
吸血される場所で最も多いのが、<足>で約半数を占めます。
次いで手や首、頭部だ。吸われた後には猛烈なかゆみが出やすい。
そのかゆみが1カ月近く続くことも多いという。まれに発熱やめまいを訴えるケースもあります。
また全身にじんましんのような斑点ができ、発熱も加わって入院した女性の報告例もあるほどです。
ヤマビルは塩水で退治できる
山歩きなどをする際、どうやってヤマビルの被害を避ければいいのでしょうか。
神奈川県県央地域県政総合センターが作成した、対策マニュアルなどによると、服装に気を付け、ヤマビルの侵入経路を塞ぐことが大切だという。
・長靴や地下足袋などを履く。
・サンダルや運動靴などはできるだけ避ける。
・靴下も長くて生地が細かいタイプがよい。
・長ズボンのすそを靴下の中に入る。
・上着も長袖を選んですそをズボンの中に入れる。
・ボタンが付いたシャツは避ける。
隙間からヤマビルが入ってくることもあるから。
首の対策も怠らないように。
ヤマビルはナメクジと同じく塩に弱い。
首や肩周りに濃度20%程度の塩水を含ませたタオルを巻いておこう。
市販の忌避剤を靴や衣類に塗る方法も推奨されています。
ヤマビルに吸血されたときの対応方法
吸血された場合は、吸盤に向かって爪でそぐようにして皮膚からヤマビルを取り除き、塩水や消毒用エタノールなどをかけて殺す。
そして傷口をつまんでヒルジンを搾り出し、消毒用エタノールや水で洗う。ばんそうこうを貼って血が流れるのを抑えよう。
抗ヒスタミン剤などのかゆみ止めの軟こうを患部に塗れば、かゆみも抑えられます。
ハチに刺された時に使用するアンモニアを含む薬は、かえって症状を悪化させるので使わないように。
こうした対策を講じても症状が続き、発疹や熱などが治まらない場合は、皮膚科などを受診するとよいだろう。