トレッキングやハイキングでトレッキングポールを使う人が数年前に比べると、とても増えました。
一度使うと、もう手放せないぐらい歩行時のサポートをしてくれる便利な道具。
トレッキングポールは、それ自体で体を支えるというよりも、3本目の足として体のバランスを常に保ち、足腰にかかる余計な負担やストレスを軽減する効果があります。さらにそれが歩行時のスピードアップにもつながり、体力に自信が無い人にとっては、欠かせない道具です。
しかしそんな便利な道具でも、過酷な自然環境の中で使っていると、知らないうちに錆びたり、使用時に違和感を感じるようになってきます。
放って置くと、トレッキングポールの整備不良が元で大怪我や事故につながる恐れがあります。
そうならないためにも、道具のメンテナンスを覚えておきましょう。
濡れとさびのケアに細心の注意が必要
トレッキングポールのメンテナンスの基本は「乾燥させること」。
優れたトレッキングポールは、シャフトとシャフトの連結部分が密閉に近い状態になっていて、グラグラしないようになっています。
その密閉に近い状態のシャフト同士の隙間に水分が入ると、さびの原因となり、ロックシステムやアンチショックが機能しなくなる恐れがあります。
下山後は必ず連結部分を分解して、パーツごとに湿気や汚れを拭き取ろう。
連結部分は案外簡単な構造なので、分解しても心配は無いでしょう(不安な方は分解しないこと)。
また、山は湿気が多いので、普通に使っているだけでもシャフト内部に濡れが発生することがあります。
そのため、晴れた日の山行のあとで見た目にはまった<汚れていないときも、メンテナンスは不可欠です。
メンテナンスを怠ると、最悪の場合、ふとしたときにトレッキングポールが折れたり、ヒビが入ることもあり、とても危険です。
平地ならまだしも、トレッキングポールが必要になるのは、体を安定させるのが難しい山道で使うと思うので、そんなところで事故が起きると大変です。ふと体重をかけた途端、トレッキングポールが折れたりすると大怪我をする可能性が高い。
トレッキングポールの手入れは、とにかく「濡れ」と「さび」に細心の注意を払うこと。それさえできれば、長く使い続けることができます。
トレッキングポールのメンテナンスポイント
□シャフトの固定法など用具の構造を理解する
□ 使用後は分解して、パーツごとに乾燥させる
□ 内部のさびには細心の注意を払う
□ 晴天時の使用後もしっかりケアする
□クリーナーや澗滑剤の使用は禁止
トレッキングポールを使用前にチェックすること
ストラップの長さを調整する
自分の手の大きさに合わせて、ストラップの長さを調整します。このとき、右手用・左手用を間違えないように。グローブを付けて歩く場合はその状態で調整します。
ストラップの長さを調整して、実際にグローブをつけて長さを合わせるといい 。
ただし、フィット感を重視しすぎて、あまりきつくしないこと。ちょっと余裕を持たせて、あわやという時はすぐにトレッキングポールを手放せるぐらいにすること。
レバー式ロックの固さを調整する
レバー式ロックシステムの場合、親指のカでレバーをスムーズに動かせるか確認します。固すぎるとシャフトが変形する恐れがあり、緩すぎると地面を突いたとき沈みこんでしまう。もしレバーがスムーズに動かないなら、シリコンスプレーを吹いた布で可動部分を拭いてみましょう(その時に絶対にシャフトを拭かないように)。
シャフトの長さ調節に慣れる
主なロックシステムとして、レバー式とスクリュー式があります。山行前には何度かシャフトの長さを調整し、それぞれの構造を理解し、操作法に慣れておく。また、不具合がないかの点検も行なう。
トレッキングポールの使用後のメンテナンス
分解して、パーツ単位にバラす
山から帰宅後、なるべく時間をおかず、ポールを分解します。シャフトをバラすだけではなく、先端キャップやジョイントプラグも外す。
シャフトを引き抜くときは、先端部分を持ち、まっすぐに勢いよく引き抜く(ただし最初はゆっくりと引き抜いて、構造を理解したら次回は勢いよく引き抜いても良い)。
組み立てるときは、接続部分付近を持ち、ゆっくり差し込む。こうすると内蔵型のアンチショックシステムのシャフトがグラつかず、曲がりなどを防止できる。
先端とキャップを水洗いする
地面につく石突き(先端)部分やゴムキャップは土などで汚れているので、水洗いして汚れをしっかり落とす。ゴムキャップは内側もすすぐ。
シャフトやジョイント部を乾拭きする
乾いた布でシャフトを乾拭きして、湿気や汚れを拭き取る。ロックシステムやアンチショックの部分はさびに弱いので特に入念に。
シャフト内部にたまった水をしっかり切る
雨天時に使用してシャフト内に水滴が浸入している場合、周囲の安全を確認してから、シャフトを力いっぱい振る。遠心カで内部の水が飛び出し、その後の乾燥が楽になります。
分解したまま立てかけて陰干しする
壁などに立てかけて、シャフト内の湿気がなくなるまで、しばらく乾燥させる。なお、パーツをバラバラにしているので、紛失には要注意。
トレッキングポールのジョイント部の磨耗が目立つようになった場合
長く使い続けると、ジョイントプラグの表面が摩耗し、黒ずんでくる。表面が擦り減ると固定力が低下するため、市販の交換パーツで補修します。ひどい時は躊躇せず破棄して新しいものを購入すること。
トレッキングポールの寿命
先端のラバーが細くなってしまった場合
石突きは、使っていると先端の金属部分やラバ一部分が摩耗して細くなります。ここが細くなると、キャップが抜けやすくなります。個人で交換するのは難しいから新しいものに買い換えよう。
シャフトが曲がってしまった場合
山行中、ポールに体重を強くかけすぎると、シャフトが曲がる恐れがあります。
曲がったシャフトは修理不可能なので、メーカーで交換してもらうか、新品に買い換える必要があります。
もったいないからと曲がったまま使い続けると、山の中で事故になる可能性がありとても危険です。
シャフト内がさびてしまった場合
内部がさびると、アンチショックやスクリュー式ロックが利かなくなったり、シャフトのスライドがスムーズにできなくなります。
サビはきちんと毎回メンテナンスしていれば錆びないので、トレッキングポールの性能を長持ちさせるためにもメンテナンスをしっかりとしておくこと。
トレッキングポールの保管方法
トレッキングポールの保管は、分解した状態でも、組み立てた状態でも、どちらでもいい。組み立てて保管する場合、きつく締めすぎるとパーツの経年劣化が早まるので、緩めに締めます。
分解した場合は、内部の湿気が完全に取り除かれたことを確認してから組み立てること。
トレッキングポールのメンテナンスの絶対禁止事項
錆止めにとシャフトに潤滑油を使ってはいけない!
潤滑油を使うとシャフトが固定されなくなり、少しチカラを加えると縮んだりして、登山中にそれが起きるととても危険で、大怪我の原因になります。
また、内部が油でベトベトになると手にも油がつくので良いことはない。