登山中の突然の気象遭難を防ぐ方法

気象の知識を身につけ、天気予報を上手に活用し、早い段階での的確な対処をすることで、気象遭難は未然に防ぐことができる。

登山者の遭難は年々増加している。警察庁によると、2006年の山岳遭難件数は1417件、遭難者数は1853人に上る。
遭難者数のうち、278人(日計)が死者・行方不明者であり、ちょっとした判断ミスでも命にかかわる重大な事故につながってしまう。

統計には山菜採りや狩猟による遭難も含まれているが、全遭難者数の69.1%、が登山目的で、そのほとんどが岩登りや沢登りを除いた、ごく一般的な登山ルートで起こった遭難である。
原因は多い順に、道迷い(39%)、滑落事故(15%)、転倒(11%)、病気(8%)、疲労(8%)と続き、悪天候や雪崩、落雷などの気象避難は少ないように思える。

しかし、霧や吹雪による道迷いや、雪や凍結による滑落や転倒、季節外れの寒さによる疲労など、間接的に気象が関係している場合も少なくないと思われる。
ここでは季節ごとの特徴的な天気と、その注意点、対策などについて考えたい。

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春「春の嵐による天気の急変に注意しよう」

「春に3日の晴れなし」といわれ、春は天気の変化、が早いのが特微である。
偏西風が強いため、低気圧は1日に約1000キロも移動し、上海付近の低気圧がわずか1日で本州中部まで到達する。
また、春は低気圧が急速に発達しやすく、天気が急変し、大荒れの天気になる。低気圧が近づくと気温が上昇して、雪山でも上着を脱いで歩けるほどである。

しかし、風が強まるとともに天気は急変して、激しい風雨に見舞われる。

●低気圧通過直前は暖かい雨で雪崩が起きやすい。

寒冷前線通過後は北寄りの風に変わり、気温は急に低下して雨から雪に変わる。

4月でも吹雪になることがあり、道迷いや滑落が起こりやすい。また、急な寒さによる疲労にも気をつけたい。
災常な暖かさのあとは、必ずといっていいほど春の嵐がやってくる。ただ、春の嵐は高い確率で前日までに予想できるので、気象情報を入手すれば早めに下山するなどの対応ができるだろう。

夏「梅雨前線は雨だけでなく、霧と強風にも注意

6月から7月の約40日間は梅雨の李節。関東甲信地万の平年日は悔雨入りが6月8日ころ、梅雨明けが7月初日ころである。

梅雨の期間中でも雨の降り方に違いがあり、夏の高気圧が強まるとともに梅雨前線が活発になるため、梅雨の前半(6月)よりも後半(7月)に大雨が降りやすい。山では麓の2倍の雨量になる。

この時期は突然、雨対策が必要だが、霧や強風に見舞われる頻度が高いことも念頭においてほしい。梅雨前線による厚い雲におおわれ、山では濃い霧に見舞われる。6月は一年で最も道迷いによる避難が多い季節なのである。

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●以外に知られていないのは、風が強いこと

梅雨前線の活動が活発なときは、前線付近の山では非常に強い風が吹くことが多い。風速が2倍になると風の力は4倍になるので、風による転倒や滑務などの危険度が増す。

雨と強い風が体の熱を奪うため、体力の消耗も激しい。強風の予測は難しいが、活発な梅雨前線が近くに停泊しているときは、稜線では風が非常に強いと思っておいたほうがよい。

●夏の落雷を避けるには?

夏山では毎日のように夕立がある。気象衛星による雲画像からもわかるように、朝はよく晴れていても、午後には山間部を中心に雲が発生する。

夏の強い日差しが山の斜面を暖め、上昇気流となり雲が発生する。いわば山は「雲発生装置」であり、低気圧が近づかなくても雨が降りやすい。山の夕立は早く、昼前に雨が降ることもめずらしくないだろう。

山で発生した雲が大きな積乱雲に成長すると、雷を伴った激しい雨が降る。数は少ないものの雷による死亡事故が毎年発生しているので、雷が近づいてきたらなるべく山小屋などに避難したほうがいい。

●夏の雷の発生を天気図で予測するのは難しい

上空に弱い寒気が入っただけでも大雷雨になる。
天気予報で「大気の状態が不安定」という表現が使われたり、降水確率が30パーセント以上といつもより高い値であればある程度の目安にはなるが、局地的な現象なので精度の高い予想とはいえない。

そこで観天望も活用したい。朝から雲が湧き上がって早い時間に山を越えて雲が成長したら、いつもより大気の状態が不安定な証拠である。

雷を避けるために行動時間を朝早くから昼までとして、雨が降り始める前に山小屋に到着することが最善である。それでも歩行中に雷に遭遇してしまったらどうするか。

近くに小屋、がなければ4M以上の高い木を探し、その下に避難する。木からの側撃雷を避けるために幹から2M以上離れ(諸説あり)、姿勢を低くした状態で雷雲が過ぎ去るのを待つしかない。稜線では、窪地などに入るしかないが、安全とは言い切れな。

●台風による暴風

夏山シーズンは台風シーズンでもある。台風の接近や上陸は7月から9月に多く、台風の動向は常に念頭においておく必要がある。
台風の動き方には季節によって特徴がある。
真夏に接近する「夏台風」は動きがゆっくりで迷走することが多い。いっぽう、「秋台風」は沖制付近で向きを変え、速いスピードで一気に本州に到達することが多い。

秋になると日本付近まで偏西風(ジェット気流)が南下するため、強い風に流されて台風のスピードが早くなるのである。
台風は暴風と大雨をもたらし、平地でも大きな被害をおよぼすものである。

山岳地域ではとうぜん登山を楽しむような状況ではない。台風接近の予想が出たなら、登山途中であっても速やかに下山することが望ましい。下山が間に合わなければ山小屋に避難すべきである。

秋「秋の周期変化と早くなる日没」

長雨が終わる10月中旬ころから秋晴れシーズン。天気はゆっくりとした周期的変化で、平均すると6日に1度の剖合で雨が降る。温暖前線が近づくと、巻雲から巻積雲(うろこ雲)、高積雲(ひつじ雲)へと徐々に雲の種類が変わり、乱層雲が立ち込めると雨が降る。寒冷前線が通過するときには積乱雲が通過するので、一時的に強い雨が降るが長い時間降ることはない。

「ひと雨一度」といわれるように、秋は雨、が降るたびに気温が下がる。月初めから月末までの気温低下は約5度で、雨が降るたびに気温が1度ずつ下がる計算になる。山では秋の深まりとともに思いのほか寒くなるので、慎重な服装選びが必要である。

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●日の入り時刻も早く、夕方は急に暗く

東京の日没時刻は、9月1日には18時10分だが、10月1日で17時26分、11月1日で16時47分。1カ月で約40分ずつ日の入り時刻が早くなる。樹林では、日没時刻の1時間前に暗くなるので、秋山は行動できる時間が短いということを充分に理解したうえで予定を立ててほしい。

●紅葉狩りの初雪

紅葉の季節を迎える同月。秋晴れとなれば絶好の登山日和だが、紅葉、が最雌期のころは、いつ初雪が降ってもおかしくない。気象庁、が観測している「初冠雪」(秋以降初めて麓から雪が見えた初日)の記録を見ると、富士山を皮切りに、羊蹄山や立山で同月上旬、八甲田山や白山で10月中旬、男体山で同月下旬と続く。2000M級の山であれば、山頂にはすでに初雪、が降っているのである。

同月は紅葉登山がメインであり、冬山装備を持っている登山者は少ないだろう。雪が降るという認識が低いため、初雪が早いと避難が相次ぐ。山岳遭難の統計によると、10月は道迷いと疲労による遭難が多いが、これは吹雪や寒さによる可能性、が大きい。山の気温は標高が100OM高くなるにつれて約6度低くなる。

●体で感じる寒さについては、風も無視できない

風速1Mにつき体感温度はおよそ1度下がる。気温5度で風速10メートルとすると、体感視度は氷点下5度になる。

寒さと強風による疲労で身動きが取れなくなることがあるので、体力に余裕をもって行動した寒気の動向は予測しやすく、2目前には天気予報で降雪の可能性がわかる。
「上空に冬の寒気がやってきている」などと解説されたときは注意が必要である。

冬「長期間の吹雪に注意する」

強い寒気が南下し、冬型の気圧配置が強まると、日本海側を中心に大雪となる。天気図上では縦縞模様で、等圧線の間隔が狭いほど北西の風が強まる。

寒気の吹き出しに対して日本海は相対的に暖かく、しかもたっぷりと水蒸気を補給するため大雪を降らせることになる。

冬山登山は冬用装備で行なわれるため、秋のように少々の雪が積もったくらいで遭難することは少ないと思われるが、強い寒気による猛吹雪が何日も続くと遭難の危険が高くなる。

猛吹雪による視界不良での道迷い、多雪による歩行困難、寒さによる凍傷、表層雪崩の危険などがあげられる。

1日か2日の吹雪でも、大雪によって歩行が困難になったり、表層雪崩の危険も高まってくる。とうぜん、1週間も続けばよりリスクは高まる。

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●吹雪が長期間続く場合と一過性で終わる場合とは、どうやって見極めればいいか?

冬型の気圧配置が続くかどうかは、強い寒気がどれだけ長く日本付近に居座るのかによる。一過性の寒気の場合はV字型ですぐに抜けていくが、鍋底型になると次々と強い寒気がやってきて、なかなか寒気が抜けない。寒気が強ければ強いほど雪の量は多くなる傾向、があり、上空5000M付近でマイナス初度以下の寒気が入ると、大雪になることが多い。

近年は寒気が居座ることが少ないので油断しがちだが、例年のような寒冬になれば、1週間くらい吹雪が続くこともあるので注意が必要です。

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