登山道における自己責任

街歩きと違って山を歩くと言うことは、自然の懐に身を置くことです。山は人の持ち物である場合もあるし、国が保護管理している地域の場合もあります。
登山道の整備が悪かったからケガをしたと言っても、山の所有者や国に責任を問うのは難しい。
山を歩く時は、何かが起きたとしても「自己責任」が基本であることを心して対応しなければならない。

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不明確な登山道の管理責任

私たちは登山中、登山道管理のことなどあまり意識もせずに利用しているが、ほとんどの登山者は、国や都道府県、市町村が登山道の維持管理をしていると考えているようだ。しかし、実際には、管理者がはっきりしている登山道はきわめて少ないというのが実態なのだ。

登山道の管理者が明確でないのは、もともと信仰登山や、狩猟・山菜採り・林業・鉱山などの山仕事のために開かれた山道が、明治時代に入って近代登山が始まると、登山口的に整備されて使われるようになったものが多いから。

しかも、登山道、が通る土地は、私有地や民有林、国有林など、所有関係が複雑であり、地形的にも県や郡、市町村の境となる尾根や川や沢沿いに登山道が通っている場合が多い。

主な山岳地のほとんどは区民の保健・休養を目的のひとつとする自然公国(国立公園・固定公国・都道府県立自然公園)に指定されているが、その登山道の多くは自然公園の指定以前から使われていた山道なのです。

国立公園に指定されている土地の所有者が、たとえば自分の林業のために作業道を整備することはあっても、一般的には他人が登山目的に作業道を通るからといって、道を整備する責任を負う必要はない。

ましてやその道が荒れていたりして登山者がケガをしたとしても、責任を負う義務はないということになる。

そうした管理責任が不明確ななかで、登山道は国や地方自治体、山小屋、民間の土地所有者、山岳会、ボランティアなど、さまざまな主体が単独で、あるいは協力しながら維持管理されてきたのだ。

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●管理されていても毎年、山岳遭難事故は起きている

全国の山岳地では登山道に関係する山岳遭難事故が起きている。

たとえば、登山道を歩行中に転滑落で死亡したり重軽傷を負う事故は多い。斜面の砂線地や岩場といった自然の地形条件のところだけでなく、階段、ハシゴ、木橋、桟道など人工施設のところで起きる場合もある。また、道標が若朽化して倒れていたり、示す方向がくるっていたりして、道に迷ったりすることもある。
転滑落や道迷いは、毎年、山岳遭難事故の原因の1~2位を占めている。

登山道に関係した事故で万一、登山道の管理者に賠償責任を求めるようなことが起きた場合、これまで行なわれてきた登山道の維持管理に大きな影響を及ぼすことは間違いない。

これまでその維持管理を実質的に担ってきた自治体や山小屋の間で、事放が起きたときの責任を問われることを恐れて、登山道の維持管理に消極的になるような雰囲気が広がっているという。

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●登山道は地形の条件が、厳しく多様なところを通っている。

雪崩や落石、地盤崩壊、地面の洗掘、倒木、落枝など、さまざまな危険要素が考えられ、そのすべてに対応できるような整備や管理は不可能です。

また、国立公園などの自然公園に指定されている地域は、自然景観を損なわずに保全するという目的からして、人聞が自然環境に手を加える行為は制限されねばならない。

登山道を借り受けて、あるいは所有・市有者が自主的に行なうにしても、登山道を整備管理しているからというだけで、万一の事故の責任を負わねばならないとしたら、これまで多様な人々がかかわってなんとか保たれてきた登山道の維持管理がむずかしくなる。

登山道の守り手がいなくなってしまうことにもなるのだ。

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●登山道を維持管理するのは登山者か

登山道の適切な維持管理が行なわれなくなれば、登山者、が歩きにくい登山道からはみ出して歩くことなどによる登山道の荒廃や植生破壊にもつながりかねない。逆に事故防止を考えるあまり、自然地形の改変や過剰な整備などが行なわれれば、自然破壊、景観破壊を引き起こす。

登山は、不使な自然、厳しい地形条件や絶えず変動する気象条件のなかで、自分の力量を総動員して目標を達成する行為であり、それこそが本質的な魅力といえる。ところが、事故を防ぐという目的で、登山の対象となる自然を人工的な施設で固めてしまうとすれば、登山の楽しみや文化が失われてしまうことにもなる。

自己責任、自助努力が登山の基本

登山においては、自己責任の原則が第一に追求されねばならない。

ところが、たとえば北アルプス立山の室堂周辺のように、交通手段、が整備され、登山経験のない人でも標高の高い山の奥地にまで入れるようになった。そうしたことを背景にして、登山における自己責任や自助努力の基本がなかなか理解されにくくなっているのが現実だ。

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●登山のリスクマネジメント

山岳遭難の実態を調べてみると、登山には必ず携行すべき地図やコンパス、ヘッドランプ、必要な誌の食料を持たなかったり、無理な行動日程など、が多く見られる。

自分が出かけようとする山について、想定されるリスクを調査・分析し、それに対応する準備や計画を行ない、必要な装備を持ち、リスクに対応した行動をとる。それが登山のリスクマネジメントだ。

登山中に予想されるリスクに対応し、リスクを減らすには、なんといっても事前の準備や計画が効果的だ。

・自分の力量をふまえた山や季節、登山ルートを選定し、余裕のある日程を組む。

・登山ルートについては、危険個所や万一のときのエスケープルートを事前に調査しておく。

・万一の場合に備えて、山岳保険の加入も考えておく。

登山道については、道の両側が切れ落ちたヤセ尾線、滑りやすい砂傑の斜面、転落の危険性の高い岩場、落石の発生しやすい場所など、さまざまな自然地形によるリスクが考えられる。

また、階段、ハシゴ、桟道、鎖場などの人工付設物も事故の原因になりやすい。

道標も安易に信じてはいけない。地図やコンパスでこまめにルートを確認しながら行動することが大切だ。

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●登山道に関しては、事故のリスクだけでなく、環境保全面についても、自らの問題として考えること

登山道は、登山者が歩くことでその表面が削れていく。
そこを雨などの水が流れて浸食することで、洗掘されていく。浸食が進むと登山道、が荒廃し、植生破壊や裸地が広がっていく。

一般的な登山では、登山道をはずれないように気をつけよう。とくにぬかるみや水溜まり、階段のつづくところは、そこを避けて歩く人が多く、植生破壊や裸地化がおこりやすい。

登山道の荒廃が進んだ山では、地元の行政や山小屋、自然保護団体などの呼びかけで、登山道の補修作業などのボランティア活動が行なわれているところもある。登山雑誌、自治体の広報紙、インターネットの情報などに気を配り、そうした活動に積極的に参加するのもいいでしょう。

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