山の危険な虫から身を守る方法(2)

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登山中には出遭いたくない虫がいます。川や沢など水のあるところではブユに悩まされ、暗く湿った山中では気づかないうちにヤマビルに咬まれて衣類が血だらけになっていたということもよくあります。
完全に防ぐことは無理ですが、少しでも被害を最小限に抑えるための対処方法を記載しています。

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ブユ(ブヨ)類の対処法

●成育環境、季節

約60種類が日本全国に分布。
種によっては山地に生息するものもあります。
渓流や小川などの汚染されていない清流に幼虫が棲むことから、おのずと成虫もその周辺に多く見られます。

発生期は種によって異なりますが、春から秋にかけてが要注意。ただしアシマダラブユは、九州以南では年中発生しています。吸血活動は朝夕の2回、活発化します。

●刺されるとどうなるか

体長2.5ミリ~3ミリ、「ブヨ」「プト」などとも呼ばれるハエに似た吸血昆虫で、やはり雌のみが吸血します。

刺されたときには軽い病みを感じる程度ですが、しばらくすると激しいかゆみが起こり、丘疹が生じます。この丘疹の中央に小出血点が見られるのが、ブユに刺されたときの特徴です。

かきすぎて患部が化膿してしまうケースも多く、人によってはアレルギー症状を起こすこともあります。かゆみは周期的に生じ、それが1~2週間続きます。

■アブ頬の対処法

●成育環境、季節

日本全国に約100種類が棟息。
小川、水田、沼などの湿地が発生源で、牧場や温泉周辺てもよく見られます。
また、山地に分布する種も少なくありません。

発生場所は毎年決まっていて、北海道や東北、北陸の山間部では局地的に大発生することがあります。

発生期は怪によって異なりますが、だいたい夏を中心に春から秋にかけてです。おもに日中に吸血します。

●刺されるとどうなるか

ハチに似た吸血昆虫で、体長は10ミリ~30ミリ。やはり雌だけが吸血します。

ヌカカやブユとは違い、刺された瞬間に激しい病みがあり、出血も見られます。患部はやがて赤く腫れ、翌日あたりからかゆみが激しくなり、人によっては2~3週間続くこともあります。

●ヌカカ、ブヨ、アブの対処・救急法

これらの吸血昆虫に刺されたときには、抗ヒスタミン剤を含んだステロイド軟宵を患部に塗るのが基本です。

アブやブユの場合は、軟膏を塗る前に患部をギユーッとつねるか前歯で咬むようにして毒液を出しておきます。

かゆみが激しいときは抗ヒスタミン剤を内服します。

細菌による二次感染を防ぐため、汚れた指でかかないように注意しましょう。

●ヌカカ、ブヨ、アブの予防法

なるべく皮膚が露出しないウエアを打て行軌するのが最善の予防策です。
肌が露出しているところや襟元、袖口の周辺には、あらかじめ虫よけ薬を塗っておくといいでしよう。

ツツガムシ類の対処法

●成育環境、季節

「つつがなしや」の語源となっているダニの仲間です。l

全国の河川敷周辺、雑木林、森林、田畑、草地、ススキの原など広いエリアに棲息。

ただしツツガムシ病を媒介するのは、アカツツガムシ(秋田、山形、新潟、福島の各県に分布)、フトゲツツガムシ(北海道、本州、四囲、九州)、タチツツガムシ(伊豆諸島、千葉、静岡、宮崎、鹿児島など)の3種で、発病地はある程度限られています。危険なのはそれぞれの幼虫が発生する時期で、アカツツガムシは6月~9月、フトゲツツガムシは秋から布まで、タテツツガムシは秋から冬にかけてです。

●刺されるとどうなるか

ツツガムシはダニの一種で、リケッチアという病原体を持っている幼虫が人に吸着してリンパ液を吸うことにより、ツツガムシ病という感染症を煤介します。成虫は人に寄生しません。

人に吸着した幼虫は2、3日で満腹になり、自然に脱落します。

刺されてもほとんど病みは感じませんが、10日はどすると刺された箇所が潰瘍になり、発疹、発熱、倦怠感、食欲不振、頭痛、悪寒、リンパ節の腫れ、関節痛などの症状が出ます。

かつて、地方によっては原因不明の風土病とされていたこともありましたが、現在、これらの症状が出た場合はまずツツガムシ病が疑われます。

●対処・救急法

虫に刺されたあとに潰瘍やかさぶたができたり、山行後1~2週間以内に発熱や発疹などの症状が現われたときには、すぐに病院で診察を受けましょう。
かつては致死率の高い難病とされていましたが、今日では早期に発見し、抗生物質の投与を行なえば完治します。

●予防法

ツツガムシが分布するエリアの山林や野原などにはなるべく立ち入らないようにすることです。

やむなく立ち入るときには、素肌の露出を抑えたウエアを着用し、露出部やウエア、靴には虫よけスプレーを散布しておきます。

また、野外ではむやみに寝ころんだりしないように。行動終了後にはゆっくりお風呂に入り、新しい服に着替えておきましょう。

ヒル類の対処法

●成育環境、季節

ヒルの仲間のうち、人に吸血の害を与えるのは、ヤマビルとチスイビルです。

ヤマビルは、秋田以南から沖縄に分布。陸棲吸血種で、渓流沿いの山林、山麓や谷間の湿地、湿った草の上や樹木、雨上がりの山道などで多く見られます。

これに対し、国内の淡水域(水田、沼、池、川など)に棲息するヒルがチスイビルです。

ヤマビルの活動期は5月~10月、とくに6月~7月が活発となります。

●刺されるとどうなるか

人間や獣類の呼気(二酸化炭素)に反応、服や靴の中に入り込み、皮醇の柔らかい所を狙って吸着、吸血します。

ちなみにヒルの動きは意外に素早く、登山靴に取り付いたヒルが、靴下内に潜り込む時間はわずか30秒ほどです。

吸血するときには血液の凝固を妨げる物質と、痛みを感じさせない物質を出すので、吸血されていてもほとんど気がつかず、また、吸血後はなかなか血が止まりません。

ヒルは自分の体重の10~20倍もの血液を吸い、満腹になると自然にはがれ落ちます。

●対処・救急法

吸着したヒルをはがすときは、かゆみ止めの薬やアルコール類をつけるとコロッと落ちます。

防虫スプレーを散布したり、ライターやマッチの火を近づけたりするのも効果があります。

無埋矢埋引っ張ってはがすと、傷口の回復が遅くなるのでやってはいけません。

傷口を流水にあてて、血液の凝固を妨げる物質をよく洗い流したら、抗ヒスタミン剤軟膏(虫刺されやかゆみ止めの薬)を塗り、キズテープなどで圧迫止血しておきます。

●予防法

ヒルは足下から這い上がってきたり、樹上から落ちてきたりするので、ヒルがいそうな場所ではよく注意して行動することです。

休憩時には靴を脱いだりズボンやシャツの裾・袖をまくりあげてみたりして、ヒルが入り込んでいないかチェックしましょう。

靴やソックス、ウエアなどに虫よけスプレーを散布しておくと、ある程度の予防効果があります。

ドクガ頬の対処法

●成育環境、季節

全国に分布し、幼虫がいろいろな雑草や樹木の葉を食べるドクガと、本州以南に分布し、ツパキやサザンカの害虫として知られるチャドクガが代表種です。ともに大発生することもあります。

発生はドクガが年1回、チャドクガが牛2回で、ドクガの幼虫の被害は5~6月、成虫による被害は6~7月に集中しています。チャドクガの被害は、幼虫が6~7月と、8月~9月、成虫が6月~7月と9月~10月です。

●刺されるとどうなるか

幼虫は体全体に、成虫は尾端に毒針毛を持っています。

また、毒針毛は幼虫が脱皮した抜け殻やサナギ、葉っぱに産みつけた卵のまわりにもいっぱいついているのでやっかいです。

毒針毛にふれただけではなんともありませんが、こすったりして皮膚に刺さると、数分~数時間後にピリピリした感じとともに強いかゆみが起こります。

また患部は炎症を起こし、発疹が現われてジンマシンのように広がります。ひどいときには全身症状となりますが、これは掻くことによって毒針毛が体のあちこちに刺さってしまうためです。かゆみは激しく、2、3週間続きます。

なお、サクラやカキの木などにつくイラガの幼虫は毒棘を持っていて、刺された瞬間に電撃的な痛みを感じます。予後はドクガ類よりもひどくはありませんが、かゆみや腫れが何日も続くことがあります。

●対処・救急法

ドクガに刺されたら、絶対にかいたりこすったりしてはなりません。

流水で洗い落としたり、セロファンテープを患部に張ってはがしたりして、できるだけ毒針毛を取り除きます。

そのあとに抗ヒスタミン剤を含むステロイド軟膏を塗っておきます。炎症がひどい場合は、抗ヒスタミン剤を内服します。イラガに刺された場合は、患部に抗ヒスタミン剤を含むステロイド軟膏を塗ります。

●予防法

幼虫にしろ成虫にしろ、なにしろふれないようにすることがいちばんの予防です。

そのためには肌の露出をできるだけ抑えたウエアで行動すること、とくに低山でヤプをこぐ場合は完全防備で挑みましょう。

また、キャンプをするときにはテントにモスキートネットを用い、成虫が飛んできても決して追い回さず、止まったところをぬれたペーパーなどで捕まえてつぶし、そのままゴミ箱に捨てます。

エキノコックスは北海道だけではなく、本州でも感染する

サナダムシの仲間であるエキノコックスは北方系の寄生虫です。エキノコックスの卵はキツネの便に混じって排出されますが、それがなんらかの経路で人の口に入ると、腸内で孵化した幼虫がおもに肝臓に寄生し、機能不全などの症状を引き起こします。

このエキノコックス症は感染から発症までの期間が数年から十数年と長く、発病すると重度の肝機能不全に陥ります。自覚症状が出るころにはすでに手遅れの場合が多く、たいてい発病後半年以内で死亡してしまいます。

エキノコックスは、成虫と幼虫では寄生できる動物が異なっています。
成虫が寄生できるのはキツネやイヌ、幼虫が寄生できるのはノネズミ、ブタ、人などです。

幼虫は、寄生した動物の体内で成虫になることはなく、また卵もつくりません。また人間がノネズミやブタから感染することもないわけです。

日本国内では、これまで北海道全域のみがエキノコックスの汚染地域とされていましたが、それが東北地方にまで広がっていることが近年になって判明しました。北海道や東北地方の山に登るときにはとくに要注意です。

エキノコックスを防ぐには、まず生水は絶対に飲まないこと、キャンプをするときに食器やコッヘル、野菜などを沢の水で洗わないことです。

やむを得ない場合は、水を沸騰させてから使うようにしましょう。エキノコックスの卵は熟には弱く、煮沸すれば確実に殺すことができます。また、エキノコックスの卵が野生のノイチゴやコケモモなどに付着していることもあるので、これらの生食は厳禁です。

さらに、キタキツネなどの野生生物には手を触れないこと、山中にイヌを連れていかないこと、l日の行動を終えたら水道水で手を洗うことも予防の一環となります。

エキノコックス症は血液検査などで早期に発見でき、手術によって完治させることができます。心配な人は早めに検査を受けておきましょう。

●こちらもご覧ください。
山の危険な虫から身を守る方法(1)

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