山の危険な虫から身を守る方法(1)

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春が過ぎてだんだんと夏が近づいてくると気になってくるのが虫の存在。
登山中に虫に刺され不快な思いをしたことがある人も多いだろう。なかには身体に重大な危険をおよぼす虫もいるので安心できない。
山で出遭う主な不快な虫について、その対処法を紹介しましょう。

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登山中に出遭う代表的な危険な虫による症例

●気づかぬうちに忍び寄るダニの魔の手

ある年の8月、T氏は朝日連峰の朝日鉱泉から入山、中ツル尾根をへて大朝日岳に至った。山から下りてきて1、2日ほど経ったときである。首のあたりに違和感を覚え、手で触れてみるとポチッとした柔らかい出っ張りができていた。病みやかゆみはまったくない。まるで突然イボができたような感じだった。気になるのでさわったり引っ張ったりしているうちに、それはポロッととれてしまった。とれたものを見てびっくりした。ダニの体だったからだ。

患部を奥さんに見てもらうと、ダニの口器がまだ皮膚のなかに食い込んでいて、引っ張ってもとれないという。そこで日赤病院に行ったのだが、専門医がいないので処置できないとのこと。次に足を運んだのが、ダニ専門の皮膚科の先生がいるという病院。ここで切開手術を受け、ようやくダニの口器を取り出してもらうことができた。

取り出した口器は、アメリカに送られてチェックを受けた。ダニの種類によっては関節炎や脳炎などさまざまな症状が現われ、慢性化してしまうライム病という重大な病気を引き起こすこともあり、駿河台病院ではその種の検査ができないからだ。結局はなにごともなく済み、患部も間もなく完治した。

あのとき、朝日鉱泉から二股に向かう途中、川べりの石の上で休憩をとった。汗をぬぐった手拭いを石の上に干しておいたのだが、その手拭いにダニがついたのかもしれない。

●北アルプスでライム病に感染

1999年5月31日付の読売新聞朝刊には、「虫さされを侮らないで」と題し、北アルプスの明神岳に登ったAさん(56)のケースが紹介されている。

(前略)下山後、左わき下がはれて赤く変色し、体長教ミリのダニが吸着しているのに気づいた。とりあえずトゲ抜きでダニを取り除き、そのままにしておいたところ、左腕がしびれ、頭痛、肩や首の痛み、全身のけん怠感などの症状が出てきた。2か月たっても治らないため、静岡県内の地元の病院皮膚科を受診、「ライム病に感染した疑いがある」と言われた。抗生剤を服用、ある程度症状は良くなったが、倦怠感がその後も続いたという。

ライム病を媒介するマダニは、おもに北海道の平地や本州の長野県以北の標高800㍍~1500㍍の高原に棲息しているので、キャンパーや登山者はとくに注意が必要です。

もしダニに吸着された場合は、つぶさすにピンセットなどで取り除き、プラスチックの容器などに入れて保存しておくこと。万一、ライム病らしき症状が現われた場合には、ダニの種を同定することがライム病感染の可能性を判断する重要な材料となる。

●各地の山で報告されるスズメパチの被害

登山中にスズメバチに襲われるというケースは、とにかく多い。
たとえば1997年10月には、宮崎県北部の鏡山を縦走中の中学生の団体をスズメバチが襲い、31人が頭や額を刺され、7人が入院するという被害を出した。99年10月には、滋賀県の蛇谷ガ峰の柾谷で登山者が襲われ、ひとりが意識不明に陥り救急車で運ばれている。

また、鳳来の岩場では、フリークライミング中にスズメバチの巣に出くわして刺されたという事例も報告されている。このケースでは辛い一箇所刺されただけで済んだが、もし大群に襲われていたら、岩場に取り付いている状態では素早く逃げることもままならず、大変危険な口に遭っていただろう。

■スズメバチ類の対処法

●成育環境、季節

都市部や人家周辺、平地、山麓、低山の雑木林など。多くの働きバチが巣を拡大する初夏から秋にかけてが最も危険です。

●スズメバチに刺されるとどうなるか

野山に生息する有害生物のなかでもいちばん危険なのがスズメバチです。その被害は全国各地におよび、国内では毎年30人~50人もの死者も出ています。

日本最大種(39ミリ~49ミリ)のオオスズメバチ、都市近郊で近年とくに被害が増えているキイロスズメバチをはじめ、国内には16種類のスズメバチが生息しています。いずれの種にしても、刺されると激痛を感じ、痛みは時間の経過とともに増します。また、刺された筒所は熱をもち、数分の間に大きく腫れ上がってきます。発熱するケースもあります。

重症の場合には顔面が蒼白になり、全身に震えがきます。嘔吐、下痢、ショック症状、血圧の急激な低下などの症状も見られ、刺されてから持分~40分ぐらいの間に、意識不明に陥ってその場に倒れてしまいます。

これはハチ毒に対してアレルギーをもっている人に見られる症状で、「アナフィラキシ、-・ショック」と呼ばれています。

ハチに刺されて死亡するケースのほとんどは、このアナフィラキシー・ショックによるものです、

アナフィラキシー・ショックの人は、一度ハチに刺きれると、その毒と反応する抗体ができてしまいます。1度目は軽症でも、2度目以後にアレルギー反応を引き起こして重症になることが多いので、充分な注意が必要です。

●対処・救急法

ハチの毒は水に溶けやすいので、刺されたらすぐに患部を流水で洗い流します。その際には、傷口から毒液を絞り出すようにします。口で吸い出してもかまいませんが、携借用のポイズン・リムーバーを他うと効果的です。

毒液を吸い出したあとには、抗ヒスタミン剤を含んだステロイド軟膏(虫刺されのかゆみ正め薬として直販されています)をたっぷりぬっておきます。

ぬれタオルや冷湿布で患部を冷やすとラクになります。

もし、アナフィラキシー・ショックの兆候が見えたら、一刻も早く病院で手当てを受けることです。

●予防法

ハチが人間に襲いかかってくるのは、はとんどの場人目は巣を守るためですい一ハチの巣というのは興味を引くものですが、わざわざ自分から巣のそばに寄っていくのはハチにケンカを売っているようなものです。たとえ見つけても近づかないようにしましょう。

スズメバチの巣は、1代かぎりのものです。どんなに大きな巣でも1年で捨てられ、翌年、また新たに営巣します。ただし、古い巣のすぐそばに新しい巣がつくられることはよくあるので、古い巣を見つけたら注意するにこしたことはありません。

もし、うっかり巣に近づいてしまうと、ハチはアゴをカチカチ鳴らしながら周囲を飛び回って威嚇するので、ゆっくりその場から離れることです。手で追い払おうとしたり、慌てて逃げ出したりするのは、逆にハチを興奮させることになってしまい、大変危険です。

警告を無視して巣に接近したり、巣をかまったりすると、ハチはいっせいに襲いかかってきます。そうなったときには、とにかく走って逃げることです。慌てて頭を抱えたり帽子をかぶったりするよりは、一刻も早く現場を離れるにかぎります。

ハチは黒いものに襲いかかる習性があるので、山へ行くときには黒っぽい服は避けたほうが無難です。また、甘い匂いにも反応するため、整髪料や香水はつけないほうがいいでしょう。

なお、アナフィラキシー・ショックは病院の皮膚科で調べてもらうことができます。一度刺されている人、心配な人は検査を受けることをお勧めします。

■ダニ頬の対処法

●成育環境、季節

人間を刺咬するマダニ類は日本全国の山林、ササ薮、草地などに分布、なかには山岳地に棲息する種もいます。活動が活発になるのは春から夏にかけてです。

●ダニに刺されるとどうなるか

ダニは、通りかかる動物の呼気(二酸化炭素)に反応して吸着、口答を皮膚内に深く差し込んで吸血します。血を吸うと1㌢近くまで肥大するため、たいてい皮膚にふれたときの、異物感で気づきます。吸着時には痛みやかゆみをほとんど感じません。吸着時間は数日間、満腹になると自然に落ちますが、まれに1カ月以上も吸着していることもあります。

脱落後は痛みや違和感が生じ、患部が赤く腫れ上がります。発熱や筋肉痛などを伴うこともあります。吸着しているダニを無理に引っ張ると、口器だけがちぎれて残り、二次感染を起こして傷口が化膿してしまいます。

また、マダニはライム病を媒介します。感染すると、関節炎や角膜炎、顔面神経麻痺、脳炎などさまざまな症状が現われ、しかもそれが慢性化します。ライム病は欧米で多くの感染者を出していますが、日本でも毎年10人~20人、これまで記録されているだけでも約200人弱の患者が確認されています。

●対処・救急法

吸着して間もないダニは、ピンセットや指でつまめば簡単に取り除くことができます。その後、傷口を消毒して、抗ヒスタミン系のかゆみ止めを塗っておきます。

吸着して時間がたっているようならば、無理にとろうとはせずに、皮膚科の医院に行って切開除去します。

また、山から帰ってきたあと、皮膚が赤く変色して腫れたり、慢性的な疲労を覚えるようだったら、念のため皮膚科で検査を受けたほうが無難です。

●予防法

なるべく皮膚が露出しないウエアを着て行動することです。ナイロンなど表面がツルツルしたジャケットをいちばん上に着ると、ある程度予防できます。また、スパッツはズボンの裾からの侵入を防ぐのに有効です。

肌の露出部、ウエアの袖や裾、靴などにあらかじめ虫よけスプレーを噴霧しておくのも効果があります。

一日の行動が終了したら、ウエアを脱いでダニがついていないか調べます。明るい色のウエアを着ているとダニの付着がめだちます。

入浴時には全裸になって体を撫で回してみましょう。
血を吸ったダニは小豆粒ぐらいの大ささになっているので、すぐわかります。

とくにヤブこぎをしたときや牧草地を通ったときには、ウエスト部や脇の下、陰部など柔らかい部分を念入りにチェックしましょう。

▼さらに詳しいマダニに関する情報はこちら(2017年7月追記)

下山後、左わき下がはれて赤く変色し、体長数ミリのダニが吸着しているのに気づきました。 とりあえずトゲ抜きでダニを取り除き、そのままにして...

■ヌカカ頬の対処法

●成育環境、季節

海上から山地までの広いエリアに生息し、山林や草原などの小川付近に大発生します。おもに春~秋にかけての薄命薄暮に活動。日中や夜間に刺されることもあります。

●刺されるとどうなるか

体長1・5ミリ~2ミリ、ヤブカよりもずっと小さな吸血昆虫です。防虫細や蚊屋の網の目もくぐり抜けてしまい、ときに襟元や袖口や頭髪のなかにまで入り込んで刺します。ただし吸血するのは雌のみ。山登りでは、沢の出合などで休憩しているときに、大発生したヌカカにあちこち刺されることがよくあります。

刺されても弱い痛みをチクリと感じる程度で、気づかないことのほうが多いようです。これは刺すときに痛み止めの物質をいっしょに出すからで、ブユなどほかの吸血昆虫も同様です。

しかし間もなく激しいかゆみが起こり、長引くとそれが1週間ほど続くこともあります。とにかくかゆいので、かきすぎて患部を化膿させてしまう人も多いようです。

●こちらもご覧ください。
 山の危険な虫から身を守る方法(2)

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